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迷い犬

第1章 前編


「やあやあ、皆さんお揃いで」

アスマが三本目の煙草に火をつけた時、カカシがひょっこりと顔を出した。

「何言ってんのよ。随分と皆待ってたみたいよ。アタシはそろそろ行くけど」

お茶を飲み終えたアンコがソファーから立ち上がった。持ってきていた袋の中身は団子だったようだ。いつの間に食べ終えたのか、串数本を素早く片付けて、待機所から出て行く。

「お前、相変わらず遅いなあ。ヤマトが首を長くして待ってるぞ」

アスマが煙草を吸いながら、入った来たカカシを見る。

「ああ、先輩。おはようございます」
「悪いな、待たせたみたいで」

「まあ…いつものことですから」
「気の長い後輩を持って、俺は幸せだよ。何せ、今の部下は、皆俺の遅刻癖に厳しいからねぇ」

はは、と軽く笑い、カカシはアスマの隣に腰を下ろした。

「ああ。ナルトとサクラですか?」
「そうそう。今や昔が懐かしいよ。俺の冗談も聞いてくれないしさ」
「何言ってるんですか。それより…」

カカシはヤマトの傍に寄り添っている子犬に目をやった。

「分かってるよ。パックンにも依頼済み。ヤマト、すぐ行こうか」

ふらりとやってきたと思うと、朗らかにカカシは言った。腰を下ろしてすぐ立ち上がろうとする彼を見て、ヤマトは驚いた顔をした。

「え?先輩、任務は大丈夫なんですか?」
「もう確認済みだよ。さっき五代目に目通りしたところだ。緊急の任務はなくてな。一時間くらいは取れそうだ」
「そうでしたか。それなら安心しましたよ。行きましょうか」

ヤマトは子犬を促して、ソファーから立ち上がった。先を行くカカシに続き、待機所を後にする。

「何か手掛かりがあるといいわね、その子」

紅が本から目を離して、こちらを見た。

「ええ、そうですね」

ヤマトが振り返って微笑むと、後ろにいる子犬も彼女を振り返りしっぽを振った。
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