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トリップ夢主、エルヴィンに拾われる

第1章 出会い


普通の精神状態であれば、異性と密着して馬に乗るなどとても心臓が持たなかったであろうが、あいにく今のユミはそれ以外のことで頭がいっぱいであった。

(一体今は何年なんだ…エルヴィンが団長なら逸れるなんてまず有り得ない)

「あ、あの」
「どうした」
「今は…その、八百何年ですか?」

恐る恐る聞くユミに、エルヴィンは怪訝そうな顔をして答える。

「840年だが…それが何か問題あるのか?」

ユミの頭は真っ白になった。巨人侵攻まで残り5年もない。この事実を彼に伝えるべきか否か、ユミには到底判断できなかった。ただ、分かることもある。今自分の後ろにいる男は、将来調査兵団を背負って立つ者であり、巨人の謎を解き人類を救う為ならば命をも捧げる覚悟を持っている。

「…こんなことを言ったら、頭おかしいと思われるでしょうけど…5年後に…ウォールマリアに巨人が侵攻してきます」
「…それが事実だとして、なぜ君がその事を知っている?」

さすがは調査兵団の変人に全幅の信頼を置かれるエルヴィンだ。突然目の前の女が訳の分からないことを言い出しても取り乱さずに落ち着いて対応してくれている。ユミはどう伝えれば自分が精神異常者でないように聞こえるか脳みそをフル回転させながら話し続けた。

「私は…おそらくこの世界の住人ではありません。私は、あなた達のことを知っていますが、それはあくまでお話の中の登場人物としてです」
「お話?」
「はい。その「お話」は、5年後のシガンシナ区が超大型巨人と鎧の巨人によって巨人に占拠される所から始まります」

ユミの拙く長い話をエルヴィンは黙って聞いている。一体どこまで話せばいいのかも分からず、今自分がここで話をすることでバタフライエフェクトでも起きるんじゃないかと不安になってきた。とにかく結論を伝えなければ…。

「とにかく、このままじゃ人類の活動領域がウォールローゼまで後退してしまうんです…!」

今ここに飛ばされてきたことに意味があるとすれば、死にゆく人たちの運命を変えることしか思いつかない。それらを一息にエルヴィンに伝え、ユミは彼の返答を待った。

「…君は」
「はい」
「巨人の正体を知っているのか」

心做しか、エルヴィンの声は少し震えているように感じた。

「…はい。ご要望とあれば、今世界がどういう状況にあり、どんな結末を迎えるのかも、その全てをお話できます」
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