第1章 トゲの夢
いつから、その香りに惹かれていたのだろう。
「初めまして! エマ・ウッズなの!」
可愛らしい女性だった。笑顔の素敵な。
「イライくんは鳥さんが好きなの?」
何気ない会話だった。
「ああ、そうなんだ」
肩に留まる梟を撫でながら、社交的に交わした言葉。
「とっても綺麗な鳥さんなの!」
エマさんは笑った。まるで、彼女の職である庭師にぴったりな、花が咲くような笑みで。
「イライくんの手、優しいからだね」
そう言うエマさんの言葉が。
婚約者のあの人と重なった気がした。
──あなたは優しいのね。
「イライくん?」
「あ、ああ、なんでもないよ……」
私が本当に優しいのなら。こんなところには来ていなかったのかもしれない。
それとも、これが運命だったとでも?