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【H×H】恋のかたち【短編】

第1章 恋はいつも突然に(イルミ)





『こ、んなこと…して、も…っく、行かな…いんだから…っ』

「まだ言ってる。もう一度言うよ、シンシアに拒否権はない」



冷たさを含んだ声。
ほんの少しだけ彼の手に力が籠った。



視界が霞んできた…

ああ、私もう死ぬんだ





ちゅ




唇に柔らかいものが当たったと思ったら、一気に肺に酸素が入り込んだことで解放されたとわかった。



『っ…げほっ!いまなにした…』

「何って、キス」

『…!?!!?』

「あ、赤くなった」

『…な、ななな』



あの柔らかい感触はこいつの唇かよ!

ていうか何でキスしたの!?
しかも、なんか、えぇ…?



思い出せば冷めかけた熱がまたぶり返す。

彼の唇はひどく冷たかったのに。

彼からのものとは思えないほど優しい口付けだった。



(かわいい反応…)
「今日は諦めてあげるよ。今日はね。でもシンシア?」




彼はずい、と顔を近づけてもう一度唇を重ねてきた。



ちゅっ



小さなリップ音を立てて離れれば、目の前にはわかりやすいくらい優しい笑みをこぼした彼。



そんな顔、ずるい。



「絶対にオレのこと好きになるよ。だから、覚悟してね?」

『……』

「あ、あとイルミね、オレの名前。次はそう呼んで」



じゃ、と軽く手を挙げて彼はビルから飛び降りていった。



『イルミ…』



彼の名を呟いて少し胸が苦しくなったのは、多分気のせいだろう。






≪END≫

  
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