第3章 ドズルコウモリ目線
「何言ってるんですか、ぼんさん。一緒に逃げますよ」
「逃げるってどうやって……って痛い痛い! 引きずらないでよ!」
僕はぼんさん引きずってまで住処に戻ろうとしたけど、やはり怪我をしているので無理はさせられなかった。
「ちょっと待っててね」
と人間は言って、噛みついたMENに怒ることもなくどこかに行った。逃げるなら今の内だと、僕はみんなを集めて一緒に住処に帰ろうとした。
「なんか、寒くない?」
ぼんさんが言ったことだった。
「え」
これは昔、よくお世話になったおじぃさんコウモリからも聞いたことがあった。最近ちょっと寒いな、なんて真夏の夜にそんなことを言って。
僕は冗談だなと思って聞き流していたら、次の日そのおじぃさんコウモリが冷たくなって動かなくなっていた。そんなことを思い出して僕はゾッとした。
「ぼんさん、今温かくしますから」僕は嫌な予感がしていた。「みんな、集まってぼんさんを温めよう!」
「分かりました!」
おらふくんはすぐに従い、おんりーとMENもなんでなんだと不思議そうにしながらも一緒にぼんさんを囲んだ。ぼんさんはそれでも寒そうにブルブル震えていて、いつもお喋りなぼんさんの口数がどんどんと減っていった。
「大丈夫なん……?」
おらふくんが心配そうに問いかけてくる。僕はうんともすんとも答えることが出来なかった。こんなこと初めてだったから、次にどうしたらいいか分からなかったのだ。
そうしている内にまたあの人間が戻ってきた。今度は声を上げて、少し早めのスピードで近寄ってきて。
しかもその人間が何か持ってきていたから、ぼんさんに何か悪いことをするに違いないと咄嗟に思った。僕は飛び上がった。
「ぼんさんに近づくな!」
だが人間は呆気なく僕たちを追い払い、ぼんさんを抱えてどこかに行ってしまった。いや、まだここで諦める訳にはいかないと人間を追いかけることもなく、すぐそばの林でまたぼんさんを下ろしたから僕は拍子抜けした。
それどころかその人間はぼんさんの怪我を治し、しばらくすると空を飛べるようになるくらい回復した。僕たちは、その人間がぼんさんを助けてくれたんだとここでようやく知った。その日から僕たちは、その人間のことを受け入れるようになったのだ。