第15章 アサヒの決断
「アサヒ、大丈夫……?!」
と姉も駆けつけてきてくれたが、そんなことより火事をなんとかしなくては。僕が体を起こすと、大岩を引きずってきたドズルが今まさに男子たちに投げつけようと飛び上がった。
「なんなんだ、このコウモリたちは!」
そう言いながら男子たちは散り散りになった。ドズルの抱えた大岩に誰もぶつからなかったが、威嚇にはなっただろう。
「な、なんなの、この火事……?!」
「お姉ちゃん、消防車呼ばなきゃ……」
「そ、そうね……ちょっと待ってね……」
そうして僕たちは放火を目の当たりしたと後から来た消防士と警察官に伝えることとなったのだが。
「ギィ……」
大半の雑木林が燃えてしまい、住処である洞窟が人目につくようになって住みづらくなったコウモリたちが僕の背中を引き止めるように見つめていた。炎はまだ消火し切れていないので、まだまだ燃え続けてしまうだろう。
「みんな……」
僕は、このコウモリたちをどうしたらいいのか、最適解は分かってはいた。だが、それでも彼らは野生のコウモリで、簡単にこちらの考えを受け入れてくれるとは思えない。
「ね、コウモリたちを家に連れて帰ったらいいじゃない」
「え」
躊躇っていた僕に助け舟を出したのは他でもない、姉だった。姉の肩には人懐っこいおらふくんが乗っている。
「だってこの子、アサヒと離れたくないって言ってるわ」と姉は他のコウモリへと目配せをした。「他のコウモリたちも」
「でも、野生のコウモリだし……」
それに、僕の家には何匹もの手乗りMOBがいる。果たして野生のコウモリたちと仲良く出来るだろうかと僕は不安だった。
「大丈夫よ。ね、部屋をもう一つ用意出来るんだし」と姉は明るく笑ってコウモリたちの前で膝をついた。「私たちのお家においで。歓迎するわ」
すると姉の言葉に応じるようにコウモリたちは返事をした気がした。姉はこう見えてMOBと会話出来る不思議な能力がある。みんなには秘密だけど。
「私はアリス。よろしくね、みんな」