第13章 アサヒ目線7
お姉ちゃんは膝を曲げてMENの方を向いた。
僕はその行動だけでも驚いた。それはすぐに動き出さなかったMENとも同じ気持ちだったのかもしれない。
確かに僕の家には手乗りMOBがたくさんいて、五匹もMOBを飼っている姉もMOB好きだ。
だけどそこにいるMENは手乗りMOBではないどころか進化したMOBで、ぐるりと曲がった二本の角に牙が見え隠れしている大きなコウモリだった。
そうこうしている間に警戒を示すように僕の両肩にはおんりーとおらふくんが飛び乗り、ドズルなんかはそこらにあった岩をズルズルと運び出して今にでもお姉ちゃんに投げつける準備をしている。……後方にいるぼんは、相変わらず敵意はなさそうなんだけれども。
「可愛いわね。そして優しいのね」MENと向き合ったお姉ちゃんがそう話し掛けた。「私は、そこにいるアサヒの姉なの。あなたに危害を加える訳でも、アサヒに怒っている訳でもないのよ?」
「ギルル……」
それでもMENは警戒体勢を崩さずに僕の方をちらりと見た。僕は頷いた。
「その人の言っていることは本当だよ。だからMEN、落ち着いて」
「……ギィ」
僕の言葉が通じたのか、MENは広げた翼を折り畳んで僕の隣に並んだ。こうして並ぶと、MENは僕の膝くらいはあった。
「そう、その子はメンっていうのね」姉が立ち上がって僕に話し掛けた。「ずっと悩み事があるような気がしていたけど、それはその子たちが原因なのね、アサヒ?」
僕は答えなかった。僕の悩みがコウモリたちのことであることは本当だったけれど、彼らのせいで夢が叶えられないなんて言い訳もしたくなかった。
姉は目を伏せた。
「あのさ、アサヒ……」
「ギィイ!!」
「……っ?!」
姉が何か言いかけた時、間近でコウモリの鳴き声が聞こえて僕は倒れた。
これはぼんじゅうるの鳴き声だったが、いつからいなかったのかぼんじゅうるがそばにいない。そして僕の目の前には姉の姿ではなく、全く別の映像が見えていてびっくりして倒れてしまったのだ。
「アサヒ?!」
姉が駆けつけてくる足音だけが聞こえた。