第11章 アサヒ目線4
その後、僕は帰る気が全然湧かなくてコウモリたちの洞窟にいた。だいぶ夜になっていたけど、構いはしなかった。
「ギィギィ!」
僕に一番懐いているおらふくんはどのコウモリよりも喜んでいるみたいだった。他のコウモリも僕を追い出すことはしなかったし、僕はぼんじゅうるとMENの間に座ってそこに居座った。
遠巻きでおんりーが僕らの様子を見守っていたみたいだが、何を思ったのかいつの間にか外に出ていて洞窟からいなくなっていた。
仲間のコウモリを呼んでいよいよ僕を追い出すのかもしれない、なんて思ったが、それはそれでいいと思った。進学に踏ん切りがつかない僕は、コウモリたちに嫌われることで割り切ろうと思っていたからだ。
だけど、こうしてぼんじゅうるやおらふくんのブラッシングをしたりお話をする時間が惜しいと思い、自分から嫌われる術が何も思いつかなかった。……いや、僕には出来なかった。
そうこうと考えている内にドズルが洞窟に戻ってきた。また岩を抱えて飛ぶ練習をしていたみたいだ。
ドズルも僕がまだ洞窟にいることに驚いたように周りを飛び回ったが、何を察したのか珍しく僕の膝の上に乗ったからびっくりした。コウモリなりの気遣いなんだろうか。
僕は、話すことにした。
「あのね、みんな……」
僕はそうして、コウモリたちに進路についての不安を言葉にした。コウモリには、多分僕たち人間の学校とか医者とか、そういう話はよく分からないだろうけど、それぞれ黙って話を聞いてくれたように思える。
「ギィ」
話し終えた頃くらいにおんりーが戻ってきた。皮袋を使ってたくさんの果物を持ってきたみたいだ。確かこのコウモリたちはフルーツバットのはずである。主食は果物なのだろう。
そこで僕もようやく我に返り、やっぱり家に帰らなきゃと思い立った。ここはコウモリたちの生活圏内であり、人間の僕がいつまでもいていい訳じゃない。
僕は立ち上がった。じゃあね、といつもの別れ言葉を言って立ち去ろうとすると、おんりーが行く手を阻むように洞窟前を飛び回った。
その後ろからおらふくんが僕に果物を持って来てくれた。振り向くと、残り三羽のコウモリたちもおんりーとおらふくんの行動を止めるようなことはしていない。
僕は、おらふくんから果物を受け取った。
「ありがとう、みんな」