第9章 アサヒ目線2
そんな囁かな朝の登校時間はあっという間に過ぎ、僕は学校で授業を受けた。
その間もずっと頭の中は進路とコウモリとゆめかちゃんの話でグルグルしてばかり。先生に心配された程だった。
そんなこんなでなんとか授業を終えて帰ろうとした時、よく知らない男子が声を掛けてきた。
「おい、ツラ貸せや」
こんな柄の悪い知り合いなんていなかったはずだ。
僕は何か嫌な予感がしながらも、抵抗するのはもっと悪い気がしてそのまま男子のあとについて行くと、学校の裏道に連れ出された。
そこには柄の悪そうな男子たちが複数いた。
なんだろう、と僕が黙っていると、男子たちの一人が切り出した。
「お前、金持ちの坊っちゃんなんだろ? 恵まれない俺たちに金くれよ」
「え……」
正直、このような目に遇うことは何度かはあった。だけどこんなストレートに言われるとは思わなかったなぁ。
「すみませんが、僕はお金は持っていないんです」
金持ちなのは親なだけであって、僕じゃない。僕はここから立ち去ろうとした。
「じゃあ、僕はここで」
今日はコウモリたちに進路について話す日なんだ。こんなところで足止めを食らっている場合ではないと踵を返すと。
「逃げられると思うなよ!」
「うっ……?!」
酷い。後頭部から殴るなんて。
僕は呆気なく倒れた。僕はそこにいる男子たちより細い体をしていたので、受け身を取るのに精一杯だった。
サボらずに柔道とかやっていればなんとかなったのかもしれないけど。
極端なイジメに遭う度にそう思いはするけど、体を鍛える時間より勉強をする時間に裂いていた僕にやり返す力なんてない。僕はこれからの痛みを覚悟した。
「本当に持っていないんです」
と僕は答えて。
「そんな嘘信じれるかよ!」
そうして僕の目の前で、大柄な男子が拳を握っているのが見えた。僕は鞄を盾に、グッと目を瞑った──。
バサバサ!!!!
強い羽ばたき音が聞こえた。