第8章 アサヒ目線
ある日の朝、僕はいつも通り執事の車に乗って学校の近くまで乗せてもらっていた。
本当は学校の前まで送るなんて言ってくれていたけど、あまり周りからよく思っていない人もいたし、僕は自分が金持ちの家出身であることを隠すように学校の近くまで送ってもらっていた。本当はもうバレてるとは思うけど……。
それに僕が近くで下りる理由がもう一つある。それは……僕が密かに思いを寄せているゆめかちゃんと登校するためだ。
「おはよう、ゆめかちゃん」
「あ、おはよう、アサヒくん!」
彼女は僕の幼なじみだ。家が近くて、小学生の頃はよく一緒に遊んだ仲。
「そろそろアレ、書かなきゃだよね〜」
ぼーっとしていると、ゆめかちゃんがそう話しかけて来た。僕は慌てた。
「えっ、なんだっけ?」
宿題でも忘れたんだっけ、と思いながら。
けどゆめかちゃんは気にする様子なくクスクス笑って答えてくれた。
「進路希望だよ! また来年書くと思うけど、そろそろ書かなきゃでしょ?」
「あ、あー、そうだったね……」
僕が考えないように避けてきたことだった。
僕は夢のために、進学はしたいと思っている。だけど脳裏にチラつくのはあそこにいるコウモリたちのこと。進学をしたら、きっとあの五羽にはしょっちゅう会いに行けなくなる。
「アサヒくんはさ、MOB医になるのが夢なんでしょ?」僕の心情を知るはずもないゆめかちゃんが問いかけた。「私、そのMOB医を助ける看護師さんになろうかな!」
「えっ」
ゆめかちゃんが、MOB看護師に……?
想像するだけで、それは素敵なことのように思えた。
「どお? 似合いそう?」
「うん、いいと思うよ」
「やった! アサヒくんがそう思うなら目指すよ!」
そしたら一緒にお仕事出来るね、なんて言われて。
僕は進路にますます悩むことになった。