第7章 MENコウモリ目線
そうして飛び続けている内に、あの人間を見つけた。どうやら大きな人工物に入って行ったところ、あれが人間の住処らしい。
人間の住処にはちらちらと小さなMOBが見えた。なるほど。あれらが最近人間の間に流行っている手乗りMOBというやつか。ってあの人間がこっちに近づいてきた?!
「ん……?」
「アサヒ、どうしたの?」
「いや……外から誰かに見られている気がしたんだけど」
あっぶな……もう少しで俺の姿を見られちまうところだった。
人間は外を覗き込み、誰もいないことを確認するとまた中に入っていた。さすがの人間も、俺が屋根の上にいるとは思わないだろう。
……それにしても人間の作る住処の屋根、なかなかオシャレだな。
いやいや、今はそんなことを考えている場合ではない。あの人間の名前が「アサヒ」だということは分かったし、一旦帰っておらふくんに教えてやってやるか……ん?
アサヒがもう一度外に出てきた。今度は大きな窓から外に出てきて、翼のない人間だったら落ちたら危なそうな、枝をいくつも重ねたような縁に寄りかかってため息をついた。
「はぁ……あのコウモリたちのこと、どうしよう」
その独り言だけで分かった。俺たちのことだ。
「高校に行ったら、もうコウモリたちに会えなくなんだよな……コウモリたちは、寂しいって思うのかな」
そりゃあ寂しいって思うだろうな。特におらふくんは、君のことを気に入っている。
「う〜ん……」アサヒは俯いた。「学校、行きたくないな」
俺はその言葉のことはよく分からなかった。だが、心に影があることくらいはコウモリだって分かった。
俺はその晩、ずっとアサヒの独り言を聞いている内にいつの間にか寝てしまい……気付いたら、翌朝を迎えていた。