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六作目 結城龍馬

第1章 本編


ある日のことだった。

「龍馬くん、これ、あげる!」

「なんだこれは?」

「うん、テニスのアニメの映画のチケットだけど、
観に行かない?
龍馬くん、テニス選手だったじゃん」

「それも、そうだが…」

俺は、考えるのだった。
少し前までの俺は、栄光に浸っていた男だった。
テニス大会で、ほぼ優勝して、
一時、世間のトップに出るほどの有名人だった。

だが、今は違う、テニス賭博に巻き込まれて、
無実の罪をかぶせられて、警察に逮捕され、
釈放後は、日本に帰ることになった。

「穂波は行くのか?」

「ううん、私はバンドの練習があって、
本当は、龍馬くんと、観に行きたいけど、
でも、別の人に頼んでもらうことにしたの!」

「それは、誰?」

「宵崎奏さん」

「アイツか…」

「奏さんに、頼んでもらって、
龍馬くんとデートに行くことになったの!
奏さん、出不精だから、
龍馬くんが、しっかり、エスコートしてあげないとね!」

「おいおい、どうして、俺が、そういう
面倒な事、しないといけないんだ?」

「龍馬くんも、ヒマでしょう?」

「まぁ、そうだが、うかつに、外に歩くのは…」

「大丈夫だって!日曜日、奏さんの家に向かってね!」

「しょうがねぇな…」

俺は、渋々、了承を得るのだった。

日曜日

「えっと…奏?」

「結城さん?」

「あぁ、結城龍馬だ」

奏の奴を、適当に、歩きまわしておかすか…

「それじゃあ、行くか」

「どこに行くの?」

「映画だ」

「何の映画?」

「穂波に聞いたところ、テニスのアニメらしい」

「ふーん」

「まぁ、アンタの好きそうなものじゃねぇけど、
観に行けと、言われたからな…」

「わかった…にしても、眩しい」

「太陽が、眩しいのか?
何となくだが、わかる気がするぜ」

「どうして」

「俺も本当は、太陽の下を、堂々と歩けないような
人だからな」

「ふーん」

「まぁ、少し喋り過ぎたな、
さて、映画でも楽しむか…」

「そうだね」

龍馬と奏は、テニスのアニメ映画を見るのだった。

「映画を見ていたら、
無性にテニスが、やりたくなってきたぜ…」

「結城さんは、テニス選手なの?」

「あぁ、元だからな」

「早く帰りたい」

「俺は、どっちでも、いいけどな」

二人の会話は、途切れ途切れの状態だったが、
会話が続くのだった…
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