第1章 本編
高く上げたボールに視線を合わせた。
「今だ!」
ラケットに溺れるボールの感覚の次には、
聞き慣れた軽快な音と共に、軌道に乗ったボールが、
コートを貫く。
「サービスエースだ!」
実況者の声と共に、試合終了のアイズが聞こえた。
「龍馬くん、これが、テニスの試合なんだね」
ふんわりと、包み込むような声に、
感じていた疲れの存在も消えていった。
「あぁ、そうだぜ、咲希、
だが、本物のテニスは、もっと高い次元で行われるんだ」
「高い次元?」
「なんかすごいね!龍馬くん!
でも、なんで、テニスしないの?
あんなに、上手なのに?」
「過去の栄光を捨てたのさ、後ろを見たくないんだ、
今は、前を向いて、歩きたいんだ」
「なんか、カッコいい!」
「へぇ~そうなんだね!
じゃあ、これからも、アタシに、
テニス教えてくれないかな?」
「咲希の頼みならば、いくらでも、教えてやるさ
まぁ、実際やるのは、咲希自身だからな」
後日、テニスコートにて、
結城龍馬にしごかれながらも、天馬咲希は、
テニスの練習に励んでいた。
「でも、なんで、ソフトテニスなんて、始めたんだ?」
「えっ?なんか、青春っぽいじゃん!」
「おいおい、それだけかよ…」
すると、穂波がやって来て…
「あっ、咲希ちゃん!龍馬くん!」
「あっ、ほなちゃん!」
「穂波か、どうした?」
「お弁当作って来たんだ、よかったら、食べない?」
「おっ、すまねーな、じゃあ、休憩にはいるか」
「はーい!」
穂波は龍馬にお弁当を食べさせようとしていた
「龍馬くーん!はい、あーん!」
「おいおい、よせよ…」
「婚約者なのに…」
「じゃあ、アタシからも、あーん!」
「咲希まで…」
龍馬は異常なまでに、モテモテハーレム状態だった。
「そう言えば、龍馬くんは、硬式テニスやっていたみたいだけど、
ソフトテニスもできるの?」
「まぁ、多少はな、飲み込みが早いだけだ」
「へぇ~龍馬くんって、何でも、出来るんだね」
「球技以外は、出来ねーんだよ、俺は」
「ふふっ、龍馬くんったら、
昔から、球技の才能があったんだよ?」
「アタシもよく見たら、いたんだった!」
「今更、気づくのかよ…やれやれだな」
穂波と咲希は、龍馬にお弁当を食べさせるのだった…
龍馬自身は、嫌がっているが…