第1章 本編
「咲希に、コーチまで、
頼まれて、大変な目に遭ったぜ、
まぁ、あくまで、形だけ、教えたけどな」
「龍馬くん、もう、テニスはしないの?」
「いいか?俺はもう、テニス選手じゃねぇ、
そのなれの果て、抜け殻なんだ。
俺はもう、過去を捨てたんだ」
「本当に全部捨てたの?私も含めて!」
「さすがに、穂波や咲希は、捨てるつもりはない」
「背中は自分には、見えないんだよ?
そこには、捨てたつもりなのに、
引っかかっているのが、あると思うんだ
心当たりとかある?」
「あると言ったら…あるな…
テニスであっちゃならねーんだ
すべて覚悟の上で、俺は、やったんだからな…」
「覚悟の上?それって、どういうこと?」
「まぁ、心残りのある、アイツの事かもしれねーな」
「えっ?」
「俺には、穂波、アンタだ、
将来を誓い合っているだろうが」
「うん…そうだけど?」
「最初の方は、恋愛は理屈じゃない、
なんて、戯言とか、言っていたけどな」
「そうだったんだ…」
「どうして、俺は、穂波を選んだんだ
そして、穂波は、どうして、俺を選んだ
って、ことに、悩むこともあった」
「それは…前から、ずっといたから?」
「小学生の時だけだろ?
咲希や一歌、それに、志歩とも出会って、
まぁ、退屈は、しなかったな…」
「そうね、小学生の時は、退屈じゃなかったね」
「今思うと、誰もが、俺とかかわると、
不幸になるかもしれない
言っちゃえば、厄病神だ、俺は」
「そんなことない!
龍馬くんは、立派に生きているじゃない!
私が、毎日、愛情たっぷりに注いでいるよ!」
「わかってはい…」」
「だったら!なおさら、私と咲希を捨てないで!」
「おい、待て、捨てるとは、言ってないぜ?」
「そうだった、ごめん、熱くなっちゃって…」
「いいんだ、俺も、そういう時もあった
でも、今は違う、穂波や咲希、
それに、一歌や志歩もいるから
頑張れるかもしれねーな」
「龍馬くん…」
龍馬は、どこかで、寂しく辛い表情をした。