第1章 本編
潮田風夏が転校してきてから、ある日の放課後。
教室から綺麗な歌声が聞こえた。
その歌は好きなバンドの曲。
マイナーなバンドだし、この曲を歌っている人が、
このバンドを好きならば話したかった。
興味本位で教室を覗いてみる。
そこに居たのは、風夏だった。
「そこで、なにやってんの?」
少し冷たい言い方になってしまった。
「唯くん!聴こえてたの!?」
「それだけの声で歌ったら聴こえるだろ」
また冷たく言い放ってしまう。
自分の悪い癖に呪いをかけようと思ったくらいだ。
それでも、風夏は笑って、
「唯くんから話し掛けてくれるなんて嬉しいな!」
俺はこいつが分からない。
「なぁ、風夏ってそのバンド好きなの?」
「え!唯くん知ってるの?マイナーだから、
近くにファンがいると思わなかった!
今度ライブあるの知っている?
チケット一枚余っているからさ!行こ!」
「えっと、僕は…」「約束!」
そう言って、風夏は教室から出て行った。
週末になり、結局、
僕は風夏とライブに行くことになって、
その待ち合わせ場所にいた。
「唯くん、お待たせ!」
遅れて来た、風夏は思っていた以上に
可愛くて少し胸が高鳴った気がした。
「よーし!行こっか!」
彼女と歩きながら、会話をした。
「おーい、唯くん?何ぼーっとしてんの?」
考え事をしていたらいつの間に買い物が終わったのか
目の前には潮田がいた。
「いや、何でもない。」
「ふーん、そっか。
じゃ、そろそろライブ行こ!」
僕たちは、ライブを観に行くのだった!
「見てみて!このバンドグループ、
あたし、ファンなの!唯くんも、好き?」
「あっ、う、うん、好きだよ…」
「そうだよね!好きじゃなきゃ、いかないもんね!」
「そうだね」
「ねぇ、あたし達も、バンドやってみようよ!
唯くん、なんか楽器できる?」
「ピ、ピアノを少々、嗜む程度で…」
「じゃあ!唯くんは、キーボードね!
後は、ベースとギターと、ドラムね!
あたしが、ボーカルね!」
「ちょっと、いきなり過ぎるよ…」
「わかってるって!でも、ありがと!
一緒にやってくれて!」
風夏は僕の手を引いた。
その手は離されることは無く、ライブ会場に着くまで
ずっと繋がれていた。でも嫌な気にはならない。
この気持ちが何かは分からないけど幸せで仕方ない