第5章 死神
「大丈夫ですか?」
眩い光と共に手を差し伸ばしてくれたのはコハロンさんだった。目を開けると、コハロンさんの右手側にいた女性がより光り輝いていて、私はつい見取れてしまった。
ついにはその光が目の前の死神をも照らし、断末魔を上げながら徐々にその形を小さくさせた。その声があまりにもうるさくて私は耳を塞いだが、塞いだところで霊体の声が聞こえなくなる訳がなかった。
「体調悪かった、かな……?」
とヒカックさんも膝をついて私の顔を覗き込む。大丈夫ですと言いたいがまだ息がしづらくて私は目を合わせられなかった。
さらには、ヒカックさんが近付いてきたことで、小さくなったとはいえ死神が持つ大鎌が今度はヒカックさんの首元まで迫っていた。私はヒカックさんに飛びついた。
「危ないっ」
「ええっ?!」
状況は後で説明しようと私はヒカックさんを押し退けてしまった。しゃがんだ体勢だったヒカックさんはふらついて尻もちはついたが倒れはしなかった。割と力がある(というか、女性の私が敵う見込みなんてなかったのだろうが)なんとか死神の大鎌から少し遠ざけた。
「え、大丈夫です……?」
どういうことなのか理解が追いつかないという顔でぽんぴーさんに心配された。
「すみません……っ」
私は素早く後ろを振り向く。すると今度は死神が炎の鎖に縛られて動けなくなっていて驚いた。鎖を辿ってみると、それはぽんぴーさんの体から二本飛び出していて私もこの状況も混乱状態だ。
「えっと……」
収拾のつかない事になってしまい、ぎぞくさんからも困惑の表情が見えた。私は慌ててヒカックさんから離れた。
「ご、ごめんなさいっ」
ああ、どうしよう、恥ずかしい。
一人で勝手に倒れただけではなく、あまりよく知らない男性に飛びつくという失態。私はその場でうずくまって顔を覆った。
「……何か視えたんだね?」
唯一事情を察してくれたのだろうドズルさんがそう言って背中をさすってくれた。私は今更あの死神が怖くなって泣きそうになるのを堪えながら、黙って何度も頷いた。