第3章 魚の守護霊
「ここにいる親切な人が僕に道案内をしてくれたんだ」
とヒカックさんが近付いてきた男性にそう説明する。すると男性が、それはどうも、うちのメンバーが、と丁寧に挨拶をしてくれたので私はここから逃げるタイミングを失っていた。
「ヒカックはすぐ迷子になるからなぁ」
「お前には言われたくないわ!」
なんて茶番なやり取りも始まる。
その間、ヒカックさんの周りから様々な色の魚が溢れ出ては消えてを繰り返し、もう一人のこの男性の守護霊はずっと明るくて眩しいし、あの〜と言葉に詰まっているとまた知らない男性が近付いてきた。
「こらこら、二人とも、早くこっちに戻ってきなさい」
その男性には、守護霊はいなかった。ヒカックさんと眩しい守護霊のいる男性は素直に部屋の奥に戻って行き、ヒカックとコハロンがご迷惑をお掛けしました、とお辞儀をして中に入って行った。
そして終始このやり取りを見守っていたドズルさんが、小声でこっそり訊ねてきた。
「あの二人に何か視えたの?」
「はい、まぁ……」
「何か悪そうな感じ?」
「いえ、そうではないと思うんですけど……」
初めて見るタイプの守護霊だった。
「紹介しようか」
何を察したのか、ドズルさんはそう言って私に手招きして会議室の奥へ。
返事を決めあぐねている私に拒否の理由も思い当たらずとりあえず中に入り、ドズルさんの紹介を受けることにした。
「みんなに紹介するよ。この人は僕の会社で働いているすごく優秀なスタッフさんなんだ」
とドズルさんに紹介されて私はそこまでじゃないですよと言っても笑顔を返されるだけ。とりあえず私は自己紹介をし、ドズルさんからの四人の紹介を聞くことにした。