第3章 魚の守護霊
階段を下りると、そこには一人の男性と出会した。
男性はキョロキョロした様子で辺りをウロウロしているが、黄色い魚もその人の周りをふわふわと浮いていた。なるほど。魚の守護霊だったのか、と私は一人納得した。
とはいえこの男性は? と角の壁に隠れながら様子を伺っていると、胸元に来客用の名札を付けているので、どうやらここの社員ではないらしいと分かる。あんな目立つ魚の守護霊を連れているのがスタッフなら、私が覚えていないはずがない。
それにしても、今日は来客の予定があったんだったかと朝礼を思い返し、そういえばどこかのゲーム実況者さんたちがこの会社に見学に来る、なんて言っていたを今更思い出した。ということは彼も、どこかのゲーム実況者なのでは、と推測が立った。
なら怪しい人ではないな、と私は周りにいる悪意ではなさそうな守護霊をも信頼し切って、スタッフとして声を掛けることにした。
「あの〜、すみません」
「あ、お疲れ様ですっ」
私が声を掛けると、明るい返事をした男性。途端に周りに青やら緑やらどんどんと魚の守護霊が湧き出て来て、私は目が魚の守護霊に向いてしまうのをグッと堪えて話を続けた。
「何かお困りですか?」
多少のことなら案内出来るかも、と聞いた言葉だった。男性の周りには今度はピンク色の魚が現れて、ついそちらに目が奪われた。