第11章 コハじゃじゃ
「これ、怪しいよねぇ」
「え?」
じゃじゃさんが指したのはテーブルの上のカレーライス。コハロンも今カレーライスに気付いたようで、こんなところにあったんだ、と不思議そうに見つめる。
「あと、怪しいと言えばこれ」
カレーライスの隣に置いてある紙に気付いたのもじゃじゃさんだった。コハロンは紙を覗き込む。
「何か書いてあるんですか?」
「いや、何も書いてないねぇ」
「ほんとだ、何も書いていない」
それから何か考えたり周りを見回したりした二人だが、本棚やグロウベリーに目が行くばかりでヒントを見つけていない。これは新しいパターンだった。脱出口上にぶら下げた文字にすら気付かないなんて。
とは言っても、この二人がせかせかしているのもドズルは見たことがなかったので、これが二人のペースなのかもしれないとドズルは考えた。ここはもう少し、様子を見守るべきだろう。
「あっ!」
しばらくして、コハロンが一際大きな声をあげた。何? とじゃじゃさんがコハロンの元に近寄った。
「これ、裏にヒントが書いてあったんだ」とコハロンが紙を光に透かしながら言った。「ほら、この裏に」
ようやく紙を裏返したコハロンは、そこに書いてある文字を小声で読んでは驚きを隠せない様子だ。じゃじゃさんもその紙の文字を覗き込む。
「えーっと、あーんしないと出られない部屋……?」
じゃじゃさんはそのまま読み上げ、それから何か察したのかクスリと笑った。
「え、どういうこと?」
コハロンだけが話についていけない様子。じゃじゃさんはテーブルに置いてあるスプーンを手に取った。
「今から俺がコハロンに、カレーをあーんしたらいいんだ」
単刀直入、シンプルな言い方でじゃじゃさんはコハロンにそう伝える。
「え、俺が? 普通は恋人とかとやるんじゃ」
「でもさ、閉じ込められちゃったからねぇ」
やるしかないよねぇと、じゃじゃさんののんびりとした口調とは真逆に、手にあるスプーンは既にカレーライスを掬っている。