第9章 ヒカぎぞ
「あ、ぎぞくさん、ここになんかあるよ?」
そして、ヒカックが皿の下にある紙を引き抜いた時だった。
ガシャン! と大きな音を立てて皿が跳ね上がった。直後には、まるでスローモーションがかかったように皿がひっくり返り、最後にはバリン! と空しく響いて皿ごとカレーライスを床に落としてしまったのだ。
思わぬ展開にドズルは勢いよく立ち上がった。ドッキリ失敗だ、と思って。
「おい、ちゃんと皿避けてから取れよ!」
「取れるかと思って……」
落とした皿側にいたぎぞくさんだったが、どうやら怪我はないようだ。だが、あいにくその部屋には雑巾や掃除機を置いていない。ドズルは急いでネタばらしついでに助けに向かっている間に、ヒカックが紙に書いてあった文字を読んで青ざめていた。
「ねぇ、ぎぞくさん、これ……」
「そんな紙よりまずは床を……」ぎぞくさんは紙へ視線を向けた。「あーんしないと出られない部屋……?」
「うわぁあ、やらかしたぁ!」
カレーライスは全て床に食べさせてしまった。こんな状態のカレーライスを食べることは出来ない。出来たとしてもここから出られるかは分からない。
「ほんっとにごめん……っ」
ヒカックがガチ謝りしている中、ぎぞくさんはかろうじて皿に残ったカレーライスをテーブルに戻したが、既にぐしゃぐしゃだった。衛生的に大丈夫か保証はない。
「二人とも、大丈夫?」
そこにドズルが外側の鉄の扉から声を掛けた。ヒカックが半泣きそうな顔ですぐに近寄ってきた。
「ごめんなさい、ドズルさん……カレーひっくり返しちゃいました……」
もうこの時点でドズルがドッキリの仕掛け人だと分かったのかどうなのか、ヒカックはかなり落ち込んでいた。
「とにかく、怪我は大丈夫? 皿割れたよね」
「はい、大丈夫です……」
「こっちは大丈夫です」
「今からレッドストーン壊すからちょっと待っててね」
「はい」
「分かりました」
そうして、ドズルはレッドストーンを壊して鉄の扉を開けた。それからドズルは二人にネタばらしをしたが、ドッキリを仕掛けられたことにはとても喜んでいた。またお願いしますなんて言われるから、これは対策を考えて次に活かさないとなぁとドズルは考えた。
なんだかんだ二人は楽しんでもらったから、これはこれでよかったのかな? という結末だった。