第9章 ヒカぎぞ
「おい、最後まで聞けぇ!」
そこをぎぞくさんが引っぱたくようにヒカックを中に連れ戻し、椅子に座らせるや否や、テーブルにあるカレーライスを指した。
「これを見ろ、ヒカック」
「何それぇ……」
まだ泣きの演技が入っているのかガチで泣いているのかは分からないが、ぎぞくさんの言葉に応じるヒカックの声は弱々しい。というかヒカックの声は張ると高めなので、人目を惹きやすいのかもしれないが。
「ここにカレーがある。これは明らかにおかしい」
とぎぞくさんが冷静に分析してくれたようだが、悲観的なヒカックは、まだそっち系の思考が拭えないらしかった。
「ぎぞくさんとカレーでプレイってこと?」
「だから! 一旦その考えから離れろ!」
ギリギリセーフな会話から、一体いつアウトな言葉が出るだろうかとドズルがカメラ越しでヒヤヒヤしていたが、隣のさんだーは楽しそうに笑っている。今更だが、さんだーにこの会話を聞かせても大丈夫だったのだろうか、とドズルは少し不安に思った。
そんな二人のことを知らないはずの彼らは、閉じ込められた部屋でどんどんと話を進めていた。
「だとしても、○○とカレーって、なんか結びつかなくない?」
ようやく正常に? 気持ちを取り直したヒカックが、そう疑問を口にしていた。ぎぞくさんもそうなんだよな、と顎に手を当てて考えている様子だ。
「それに、ここにぽんPとコハロンがいないのも気になるんだよな。あの二人がこんな壮大なドッキリを仕掛けるとは思えないし」
とぎぞくさんは言う。そう。二人は、まえよんとコラボしたいと嘘を言ってこの部屋に誘い込んだので、混乱させるにはいいカモフラージュにはなったのかもしれない。
「ってことは、Pもコハちゃんも別の部屋で閉じ込められてる可能性があるってことかな?」
「さぁ、どうだろうな」
とにかくまずは早くここから出ないと、とぎぞくさんが言いかけたのも束の間、ヒカックがボソッとこう呟いた。
「はぁ、閉じ込められるなら可愛い女の子と一緒がよかったな」
「おい、聞こえてんぞ💢」
この二人は本当にラチが明かないなぁなんて思いながらも、面白いからいいやとドズルがケラケラ笑っていると、ヒカックが閃いたように皿の下の紙に気が付いた。