第8章 雨米
「そうだよね。閉じ込められるなら好みの女子とかと閉じ込められたいよね」
冗談なのかどうなのか、雨栗がそう言いながらクスクスと笑った。この状況なら雨栗が閉じ込めた本人になりそうな態度だ。
「なんだよ、ここで好みの女子の話でもしろっていうのか……?」直後、米ショーは何かに気が付いた。「あれ、雨栗……皿の下に何かあるぞ?」
「え?」
米ショーに言われて雨栗はカレーライスの皿を持ち上げる。彼らは二つのヒントの発見が早かった。
「何か書いてあるよ?」
「えーっと、あーんしないと出られない部屋……?」
雨栗と米ショーはお互い見つめ合った。それから噴き出すように笑ってなんでここで、と二人はケラケラ笑った。
「米ショーと……私が?」
「なんで雨栗としなきゃならないんだよ」
そうして二人がひとしきり笑ったあと。
冷静になって、雨栗が切り出した。
「これってさ、誰が作った部屋だと思う?」
思わぬ質問に、ドズルはドキリとした。
しかし米ショーは、こういう話の振り方には慣れているのか、普通に受け答えをする。
「うーん、本棚に葉っぱだろ? どっかで見たことある気がするんだけど……」
と米ショーが考え込むが、雨栗は答えなんて気にしていないのか、話を続けた。
「これ、誰かが作ったドッキリなのかと思って」と雨栗が言う。「そうだとしたら、どこかにカメラとかありそうじゃない?」
「カメラ……ああ、ありそう!」
そうしてカメラを探し始めた二人だったが、天井に取り付けたものには気付かれず。だが、二つ目のカメラは発見されてしまった。
「あ、ここにあったよ」
それは本棚の奥に仕掛けていた隠しカメラだった。二人の表情をよく見るために設置したものだ。
「なら、やるしかないよね」
ニコニコしながら、何か覚悟を決めたかのように雨栗は言う。米ショーはきょとんとしていた。
「何を……」
「これだよ、これ」
米ショーに対し、雨栗は紙を見せて答える。二人は無事に、カレーライスをあーんするのだろうか。
「そうか、雨栗とあーんしないと出られないんだもんな」
じゃあやるか、と米ショーもやる気になったところで、けどさ、と雨栗がこう言った。