第6章 きおたい
「おい、なんでそんなに離れるんだよ、たいたい」
この二人は、どのペアよりも早く、脱出口に書かれている文字には気付いた組であった。
「そりゃあ離れるでしょ! なんで寄りにもよってきおきおとハグしなきゃならないんだよ?!」
もう一つのヒントを見つけていなかったので、回答を勘違いしていたようだが。
「だってこの部屋が、○○しないと出られないからだよ。○って二つあるじゃん? 絶対ハグじゃん」
「なんでそうなるんだよ……」
きおきおの自己解釈に、たいたいはうんざりした様子で呟く。
「それともたいたいは、俺とハグするのが嫌なのか?」
人懐っこいきおきおには、ハグにはなんの抵抗もないのか、両腕を広げたままたいたいに詰め寄った。たいたいは必死に抵抗する。
「待て待て、落ち着け! きおきお!」たいたいはきおきおの手を下ろさせた。「お前にはアレが見えないのか!」
「え?」きおきおはたいたいが指す天井を見上げる。「なんだよ? 上に何かあるのかよ……?」
「あれだよあれ、あの黒い丸っこいやつ!」
「ああ、アレ?」
どうやら二人は、天井の半円型カメラに気付いたようだ。
「そうだよ。アレ、絶対監視カメラだ」
「え、カメラなの、アレが?」
洞察力の高いたいたいはカメラに気付いたようだが、きおきおはこれがカメラだとは思っていなかったらしい。
「そうに決まってるだろ、この状況!」たいたいの言葉は止まらない。「アレがあるということは、誰かが俺たちを見てるってことなんだよ。誰かが見ている状況でハグ出来るのか、お前は!」
「はははっ、そうかそうか。別に俺はいいけどな」
これがきおきおの良さというのかなんなのか、彼のマイペースさにたいたいはため息をつきながら視線を逸らした。
そこでようやく、たいたいはカレーライスに気付いたようだ。