第4章 おんルザ
「さっさとやればいいんだろうけど……」と渋るのはおんりーだ。「カメラもあるし、撮影されてるなら、少しは争った方がいいのかなって」
ああ、真面目なおんりーの性格が発揮していただけだったのか。おんりーは撮影のことを気にして「あーん」を躊躇っていたのだ。
「ああ、なるほど」ルザクは少し上を見て(もしかしたら天井のカメラを見ていたのかも)何か考える素振りをしてからこう言った。「じゃあ争う?」
そんな切り出し方でいいのかい、とツッコミを入れたくなる会話だが、ルザクもおんりーもそれでいいらしく、二人のやり取りは続いた。
「俺がやるよ。いい?」
「いいよ〜」
なんとも緊迫した様子のない二人。おんりーがスプーンを手に取り、カレーライスを掬った。
「あ、さっき温めたから少し熱いかも」
「電子レンジあったんだ」
「そ、こっちにね」
「すごいなぁ」
何を喋ってもほのぼのするばかりの二人。おんりーは躊躇なくカレーライスを乗せたスプーンをルザクに向けた。
「さぁ、食べるんだ、ルザク……!」
「僕が、食べるのか」
演技っぽいセリフを吐き、おんりーとルザクは争っているつもりらしい会話を続ける。
「ルザク、口を開けるんだ」
「嫌だ……わ、口が勝手に……!」
パクッ。
おんりーが差し出したカレーライスを、いとも簡単に食べたルザク。もぐもぐと口を動かしている間に、ガチャンと鉄の扉が開いた。
「あ、開いたよ」
「ほんとだ〜」
おんりーとルザクは開いた扉へ目を向ける。
「……こんなんでよかったのか?」
「ん、いいと思う」ポロッと零したおんりーの言葉に、ルザクがそう言った。「カレー美味しかったし」
「あ、俺も食べてから出よっと」
ドズルがネタばらしにカメラから離れている間に、おんりーがスプーンを通してルザクと間接キスをしたとファンの間で騒がれたということは、語るまでもないだろう。