第3章 ちりぢり
「奥様から聞きました。熱があると、今日は安静にして休んでください。何か用がある時は鈴を鳴らしてください」
渡された小さい鈴
··チリン
(優しい音色がする)
「あの、貴方の名前は··」
「名前、ですか?」
(なんだろ、聞かれたくない感じか?)
「私の名前は··✿✿✿です」
「···?」
名前が、聞き取れない
(あの方と同じ反応ね、確かに私の名前はない)
正確には
『名前などない』
「あの、··病人の俺が言うのもなんですか··俺が名付けてもいいですか?」
「はい、喜んで」
「··貴方の名前は··」
何故かこの人を見てると
夢で見るアイツの顔が浮かぶ
「桜、貴方の名前は桜」
「桜、素敵な名前ありがとうございます」