第15章 再会 × 別れ
ドン!
『きゃあっ!』
「ってぇ…どこ見てんだ!あぁ!?」
『ご、ごめんなさい!…あっ』
イルミの後姿が見えるほどすぐ近くまで追いついていたのに、彼は振り向きもせず行ってしまったらしく、姿を見失った。
「おい、ねーちゃん ぶつかっといてよそ見か?コラ!!」
『あ、いえ、すみません!ちゃんと見ていなくて…怪我はありませんか?』
ぶつかってしまった男が凄んでくる。早くイルミを追いかけたいのに、その場から動けずただただ謝る。
「へー…よく見りゃかわいい顔してんじゃねぇか。お詫びにちょっと付き合えや!ちょうど退屈してたんだよ!」
『あ、あの、私用事が…』
「あ?逆らうわけ?つべこべ言わずについてこい!」
男が強引にサクラの腕を掴む。
『痛…っ離してください!』
「うるせぇ!!」
男はグイグイと引っ張り人気のない路地へ連れて行こうとする。
『いや!離して!!』
必死に抵抗するがびくともせず、ズルズルと路地へ引きずり込まれて行く。
シャッ!
「ぎゃっ!痛え!何だ!?」
黒い何かがサクラの目の前を横切ったと同時に男は顔を押さえてうずくまった。
『ネーロ!!』
「フーッ!」
「んだぁ?ただの猫じゃねぇかビビらせやがって!クソが!」
男は怒りで顔を真っ赤にしながら右足を振り上げる。
が、
「やめろ」
低く冷たい声が狭い路地に響いた。
「なんだ、お前……ひっ!」
サクラが男に目線を戻せば、クロロが男の喉元にナイフをあてていた。男は短く呼吸をするのが精一杯で動けないでいる。
「…今このまま大人しくここから消えるなら逃してやろう。どうする?」
明らかな威圧と殺気を含んだ声で問う。声も出せなくなった男は小さく震えたまま何度も首を縦に振る。
「さっさと消えろ。」
クロロが解放したと同時に、男はサクラには見向きもせずに一目散に走り去って行った。
「サクラ、大丈夫か?遅くなってすまない。」
『ううん、ありがとうクロロ。大丈夫だよ。それと…』
足元に擦り寄っていたネーロを抱き上げて頭を撫でてやる。
「ネーロもありがと。」
ネーロは短く鳴いて気持ちよさそうに目を細めた。その様子を見てサクラも気持ちを落ち着かせる。
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