第13章 帰還 × イタズラ
(シャル、空気を読め…!)
クロロの心の叫びも虚しく、
『! シャルさん!』
サクラは慌ててぱっとクロロから離れた。
「ん?サクラ、どうしたの?泣いてるじゃん!団長にいじめられた?」
「…おい」
『ち、違うよ!これは私が勝手に…』
「気をつけなね?団長、気に入った子には手が早いから。」
『え』
こそっとサクラに耳打ちをすれば、顔を赤らめる。
「…シャル、さっさとグラスをよこせ。」
耳打ちした言葉が聞こえたのか、不機嫌そうにクロロが言う。
「はいはい。ほら、サクラどうぞ」
促す仕草をするシャルナークを見て、こくりと頷くサクラ。
ドキドキしながら用意されたグラスに両手をかざした。
やり方なんて漫画でしか見たことがないのに自然と体が動いた。そのまま身を任せれば、水はゼリー状になって上へと伸びていき、そのまま何かを形作っていく。やがて完成したのは、
『…天使?』
「すご…こんなの見たことないよ…」
「…サクラは特質系だな。予想通りだ。」
クロロだけが満足そうに呟く。水でできた天使はとても悲しそうな表情をしていて。それを見たサクラはすぐに気がついた。
(これ、天使じゃなくて私だ…)
サクラとシャルナークが呆然としている中、クロロはまた思案するような仕草をしてサクラを見つめる。それに気づき、不思議そうにクロロを見つめ返す。
「よし、サクラ」
『はい…?』
「お前、旅団に入れ。」
「ちょ、団長!何言ってるの!?」
『そうですよクロロさん!私が旅団だなんてとんでもない!』
「だいたいさ、今は欠番もないんだから入れられないでしょ?」
「そうか…。サクラの能力と、未来がわかるというのはとても役に立つと思ったんだが。」
ふむ、とまた思案するクロロ。
『あの、クロロさん?』
「クロロでいい。」
『じゃクロロ。私、ちょっと行かなきゃいけないところがあって』
そう、先程から黒猫が足に擦り寄ってきていたのだ。甘えているように見せかけて、恐らく催促しているのだろう。早くしろと。
「何?そうか。それは…」
「サクラ!!」
クロロが言いかけた言葉に被さるように、聞き覚えのありすぎる声が遠くで聞こえた。