第13章 帰還 × イタズラ
『う……』
日の眩しさにサクラは目を覚ます。寝転がっていたのは布団の上ではなく見慣れない森の中。木漏れ日がサクラに降り注いでいた。
『ここって…』
最初にトリップした時も森の中だった。戻ってきたんだとほっとしたのも束の間、背後からかさっかさっと音が聞こえてきた。
人の気配。誰かが近づいてくる。
(イルミ…?)
また会える嬉しさと、怒っているかもしれないという不安が入り混じり、少し泣きそうな顔になりながら振り返った。
『え…』
そこにいたのは、想像していた黒髪とは正反対の綺麗な金髪の爽やか美青年。少し幼さの残る愛らしい笑みを浮かべてはいるものの、どこか闇のような雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。
「君、大丈夫?」
耳障りの良いトーンでそう投げかけてくる美青年。
『え、っと…』
「こんなところでどうしたの?迷子?」
『(あれ、この人って確か…)シャルナークさん?』
「…!!どうして俺の名前…」
(あ…!やっちゃった!)
刹那、彼から笑みは消え去り突き刺すような殺気がサクラを覆った。足が竦んで動けなくなっている隙に、シャルナークは彼女の腕を掴んで問う。
「どうして俺の名前を知ってるのかな。素直に言ってごらん?」
言葉は優しいのに、腕を掴む力はどんどん強くなっていきサクラの腕がミシリと鈍い音を立てる。
『いた…っ』
「ほら、早く答えないと折れちゃうよ?」
『…っ!』
答えたいのに痛みが邪魔をして声が出せない。
シャッ!
「!!」
『ネーロ!』
毛を逆立てた黒猫が彼に飛びつく。その拍子にサクラの腕が離され、それを確認したネーロはシャルナークから距離を取った。
「ふーん…(このネコ、なんか変な感じだな)」
『あ、あのっ!私怪しい者ではありません!名前はその、話せば長くなりますが…えっと…』
語尾がどんどん小さくなっていくサクラを見てクスッとシャルナークは笑う。
「ごめん、手荒なことをしたね。話し聞きたいから俺と来てくれるかな。」
『あ、はい!もちろんです!(アジトかな?)』
殺気もなくなって警戒心のない純粋な笑顔のシャルナークに安心したサクラ。未だ毛を逆立てて彼を睨み続けるネーロをそっと抱き上げて頭を撫でながら、シャルナークの後を追った。