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【H×H】ずっとそばにいて【イルミ】

第12章 消失 × 現実




『あ、そういえば。』

何かに気付いて『HUNTER×HUNTER』の3巻を手に取り、ぱらぱらとページをめくる。そしてハンター試験の三次試験、四次試験が掲載されている辺りを確認した。


『私があの世界に行っていたとしたら………あれ?』


自分が本当に『HUNTER×HUNTER』の世界にトリップしていたのであれば自身の姿も漫画の中に登場しているのではないかと思ったのだ。


しかし、いなかった。
内容は原作通り、何も変わらないのだ。


『んー?おかしいな…』


やはり夢だったのかと不安になり、寝室にある鏡を覗き込んだ。
間違いなくあるイルミの印。そっと指で触れてみる。


『ふふ』


付けられたときは恥ずかしくて嫌だったのに、今はこの印をとても愛おしく感じていた。

これだけが、あの世界にいたという大切な証拠。
大好きな人が残してくれた大事な印。



『…明日もう一度あの古本屋さんに行ってみようかな!』






「ダメだよ。」

『…え?』

自分しかいないはずの家の中で誰かの声がした。後ろを振り返るといつの間にか目を覚ました黒猫がちょこんとベッドの上に座っている。他には何も変わりない。


『幻聴かな?疲れてるのかも…今日は早く寝よう。』

「サクラ、ここだよ。」

『!?』


さっきと同じ声。ここだよという声の方を見れば、黒猫がじっとサクラを見つめていた。


『まさかね…』

「そのまさかだってば。」


サクラは目を見開く。驚いて声も出せない。目の前の黒猫が喋ったのだ。驚かない方がおかしい。


「この姿にしたのは正解だったな。ちゃんとサクラが拾ってくれた。」

『な、ななななにっ!?』

言葉が詰まって上手く喋れない。


「僕はネーロ。君をあの世界に連れて行ったのは僕だよ。」

『!?』

目の前で起きていることにもまだついていけていないのに、更に追い討ちをかけるようにネーロは話を続ける。


「お試しであの世界に連れて行ったんだけど、君が無茶をしようとするから一度戻ってきてもらったんだ。」

『……』

「あの古本屋にはもう行っちゃダメだよ。というかあそこはもうないから行けないというのが正しいけど。」

『…はぁ』

「ちゃんと聞いてる?」

『ちょ、ちょっとついていけてないんですが…』

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