第11章 ハンター試験④
また最悪な夢を見た。
『お前さえいなければ…!』
―お父さん…
『どうして生まれてきたのよ。』
―お母さん…
『お姉ちゃんなんか大嫌い。消えてよ。』
―ツバキ…
『もうキミに用はないよ◆』
―ヒソカ…っ
『お前はもういらない。』
―イルミ!
嫌だよ
置いていかないで
一人にしないで
ねぇ、いい子にするから
待って!
行かないで!
───────
目を開けると涙が溢れ出た。ぼんやりと視界に入ってきたのは見たことのない天井。少し記憶が混乱している。
『あれ…ここは…』
「サクラ」
乾いた声で呟いてすぐ、名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
視線だけを声の方に動かせば、変装を解いたイルミがサクラを見下ろしていた。
『…っ』
「そんなに泣いて、また怖い夢でも見た?」
『イル…ッ』
今までと変わらないいつものイルミ。安堵したサクラは咄嗟に彼に抱き着いた。
「!」
『ごめ、なさ…イルミ、ごめんなさい…っ』
「……」
『置いて、…っかないで…いい、こにす…っるからぁ…っ』
サクラは子どものように泣きじゃくり、ぎゅうっとしがみつくようにイルミを抱き締める。
ごめんなさい、置いていかないで、と繰り返し呟きながら。
(ああもう…殺すつもりだったのに)
はぁ、と一呼吸置いてサクラを抱き締め返した。
「置いていかないよ、どこにも」
『ほ、んと…?』
「…オレ、サクラを殺すつもりでここにいた」
『うん…』
「あれ、驚かないんだ。怖くないの?」
『怖いよ…でも、そのくらい酷いこと言ったから…』
「…でもさ。殺せないんだ、サクラのこと」
『……どうして?』
「わからない。オレが知りたいよ」
『……』
「暗殺者失格だよこんなの。でもサクラ殺したらもう笑った顔とか怒った顔とか、気持ち良さそうな寝顔とか、そういうの見られなくなるって思ったら、……」
『……イルミ?』
「……サクラはいつもオレの気持ちを掻き回してさ。どういうつもり?」
『え…』