第3章 質疑応答 × 接近
『お前なんか生まれなければ…!』
『あんたのせいで私たちは…!!』
『『お前はもう イ ラ ナ イ 』』
――――……
『………っ!!』
がばっと体を起こして、夢だったことに気付く。頬にはまだ新しい涙の跡。
寝ながらしばらく泣いていたのだろう、頭が重い。
(あーあ…久しぶりに嫌な夢見たなぁ)
ふぅと一息ついて、やっと隣の気配に気付いた。
『ぎゃあっ!?いつからそこに!!?』
昨日と変わらない、私を惹きつける雰囲気の人がすぐ横に立っていた。
(この人、男かな女かな?)
「さっきからいたけど」
『そうですか…ていうかここどこですか?』
「オレの部屋」
『えっ!?』
見回すと、見たことのない家具に景色。明らかに知らない場所だった。
(本当に知らない?どうしても”見覚えのある”感覚が離れないんだよね…ていうか私どうしたんだっけ?頭がものすごく痛くなって…)
「倒れてどうしようもないから、しょうがなく連れてきた。」
サクラの思考を読んだように答えるその人は、声の低さから男の人だと理解するサクラ。
『そ、そうでしたか!すみません、お世話になりました!!』
なんとなく嫌な雰囲気を感じ取り、そそくさとその場から去ろうとする。
「だめ。行かせないよ」
『ちょっ、離してください!』
「無理。まだ何も聞いてない。帰らせるわけないよね?」
掴まれた腕が少し軋んだ。
それでも振り解こうと抵抗すると更に力が篭る。
『痛いです、離してください。』
「……オレの質問に答えろ」
『…っ(怖すぎ!!)』
声色をひとつ低くして、じっとサクラを見下ろす彼。
背筋が冷たくなって嫌な汗が頬を伝い、声を出したくても出せない。
身の危険を感じたサクラは大人しくすることにした。
『わかりました。答えますから離してください。それとその殺気?みたいなのも抑えてもらえますか?』
「………」
はぁ…と溜息のあとに腕を掴む力は弱くなったが、まだ離してもらえない。
『(いいや、腕は諦めよう…)あの、とりあえずあなたのお名前を教えてもらえますか?』
「イルミ」
『イルミさん…?』
聞いたことのある名前。でも思い出せない。なぜかその名前を聞いただけで胸の奥が少し痛む。