第8章 ハンター試験②
(イルミは恋人でもなんでもないのに隠す必要なかったよね…)
慌てて否定してからすぐに後悔した。
正直に言ったところで別に何もないはずなのに。
「…サクラ、こっちきて」
イルミが隣に座るよう促す。有無を言わさぬ雰囲気にサクラは大人しく腰をおろした。
「……」
『……』
何も言わないイルミと、なんとなく気まずくて何を話せばいいのかわからないサクラ。
イルミとはぐれたときは早く会いたいと思ったのに。
もし、会いたかったと素直に言えば彼は喜んでくれたのだろうか。
沈黙が気まずくて何か話そうと何度も口を開きかけたが、結局言葉が見つからなかった。
そして遂に言葉を交わさないまま、二次試験がスタートした。
──────────
二次試験の試験官はブハラという大男と、メンチというスタイルのいい女性。この二人がおいしいと認める料理を出せば合格だそうだ。
まずはブハラの課題、豚の丸焼き。
とりあえず森に入ってすぐ、イルミは変装を解いた。しかし未だ不機嫌な様子。
(あーもう気まずい!イルミは何も喋らないし、不機嫌ですって背中が言ってるし)
『イルミ?』
「……」
『イルミ!』
「……」
『イルミってば!!』
「うるさいな。何?」
『うるさいって何よ!イルミが返事してくれないからでしょ!?』
「あーはいはい。それで、何?」
『さっきからなんなの?私なにかした?したなら教えて、わかんないから!』
「さぁ?」
『わかったもういい!じゃあね!!』
「へぇ、どこ行くの?オレから離れないでって言ったよね?ああヒソカのところか。仲良さそうだったもんね」
『な…っ!?』
やっとわかったイルミが不機嫌な理由。
ヒソカとのことをまだ勘繰っているのだ。否定しようと口を開く前にイルミから言われた言葉にどうしようもなく腹が立ってあとはもう止められなかった。
「もういいよ、行きなよ。オレには全く関係ないし。じゃあね」
『……っ!そうだよね!私なんてどうでもいいよね!わかりました!!さようなら!!』
「うるさいから早くどこか行ってよ」
『言われなくてもそうするわよ!』
もう売り言葉に買い言葉だ。
『馬鹿イルミ!!』
そう言い捨ててサクラは森の中へと消えていった。