第2章 出会い
光を放っていたのは、一冊の分厚い本。表紙には美しい刺繍が施されている。吸い寄せられるようにその本に手をかけ、パラパラとめくってみた。
『んん?何も書いてない、真っ白』
どのページを見ても白一色だった。
『本じゃなくて日記帳?にしては大きいか…』
なーんだ、と閉じようとしたところで光がより強くなる。
『やだ…な、に…?』
まばゆい光に耐えきれず思わずぎゅっと目をつぶる。
瞼を閉じても感じるほどの強い光。しばらくすると眩しさがなくなり、
『………?』
そっと目を開けた。
そして、冒頭に至る…
―――…
『これってもしかして俗に言うトリップってやつ?なんか目の前に見たことある動物もいるし…ここって、あれじゃない!?あのー…ほら、あれだよ』
不安から独り言が止まらない
(あれ?思い出せない…なんで?ほら、私が大好きな漫画あったじゃん!…あれ?ほんとに思い出せない。…っ!?頭いたい…なにこれ)
うぅ…と唸りながらまた頭を抱える。思い出したいことが思い出せない。
多分、すごく大事なことのはずなのに。
「きみ、誰?」
『ひいっ…!?』
気配もなく背後から聞こえた声に勢いよく振り向いた。
どくんっ
心臓が跳ねた
目を逸らせない
吸い込まれそうなくらい真っ黒な瞳。
瞳と同じ黒の長い髪。
それに映える白い肌。長い手足。
一瞬で心奪われた。
「ねぇ、聞いてる?」
『あ…』
「早く答えないと、殺し『あ、あああのっサクラですっ!!』」
思ったより大きな声が出て自分でも驚いた。こんな超絶美人が殺すとか怖いこと言うから!
でもこの人どこかで見たことあるような…
心臓がうるさい
誰だっけ…
「何しにきた?ここがどこかわかってるよね」
ゆらりと殺気を纏わせた手を伸ばす目の前の人。
誰だっけ?この人……あ、そうだ!私の大好きな…イ……
『い、痛…』
また頭痛。さっきよりもさらに酷い。
『やだ、痛い…たすけて…』
そのままサクラは気を失って倒れ込んだ。
「えー困ったなぁ」
横たわるサクラをじっと見つめる。
すぐ殺しちゃえばよかったのに、
「何やってるんだろ」
そう呟きながら、イルミはサクラを抱きかかえてその場を後にした。