第2章 出会い
『ここどこ…?私、古本屋にいなかったっけ…』
突然の出来事に頭がついてかない。
うーん…と頭を抱えて思考をフル回転させた。
(さっきまで何してたっけ?)
――2時間前…
『ふぅ…やっと終わった』
ぐっと腕を上に伸ばして深く呼吸する。
『さてと今日は…』
行きたいところがあるんだよね、と机に広がったノートや参考書を適当にバッグにしまって席を立つ。
「あ、サクラーっ!みんなでカラオケ行かない?」
『ごめん!今日用事あるのー!』
「えぇーサクラの歌ききたいのにぃ」
『ほんとごめん!また誘って?』
「もう!次は絶対ね?」
『うん、約束!じゃあまたね。』
ひらひらと手を振って友人と別れ大学を出た。
『うわっ寒ーい!雪でも降りそう…』
冷たい風に体を縮こませながら目当ての場所へ向かう。
(えーと、確かこの辺に…あった!)
年季の入った建物を見上げ、怪しい雰囲気なのになぜかときめく。入りがたい雰囲気に躊躇いながらもそっと中に入った。
(今まで気付かなかったのが不思議だなぁ)
この店を見つけたのはつい最近。
大学に通う道だからほぼ毎日通るのに、今まで全く目に留まらなかった。
店内は外観よりもずっと綺麗で、様々な本がきっちり本棚に納められている。
『へー…こんなに素敵な場所ならもっと早く知りたかったな…』
サクラは本を読むのが大好きで、勉強よりも読書を優先するくらいだった。
並ぶ本を端からゆっくり眺めていると、
「いらっしゃい…」
びくっ!!
かけられた声に反射的に振り向くとカウンターに老婆がいた。多分店主だろう。
『こ、こんにちは…』
サクラがぺこりと軽く頭を下げると
「ゆっくり見ていきなさい…」
そう言うと少しの笑みを残して、奥へと消えた。
(びっくりした…!)
驚きでしばらく体が動かなかったが、さっきまで老婆がいたカウンターが淡く光っていることに気づいて自然と足が進んだ。
『なにこれ…本?』