第7章 ハンター試験①
『…イルミごめんね?また迷惑かけちゃったね。』
「……」
『…イ、イルミ?』
何も言わずにサクラをじっと見つめるイルミに、ものすごく怒らせてしまったんだとちょっと涙目になる。
すると、ぴたりとイルミの足が止まってサクラは下ろされた。
『イルミ?みんな行っちゃうよ?』
「………」
何も答えず尚もサクラを見つめるイルミ。
(やっぱり怒ってるんだ…。置いてかれるのかな…)
しょうがないか、と思うのとイルミがサクラを引き寄せるのは同時だった。苦しくなるくらい強く抱き締められる。
「サクラ…」
吐息混じりに名を呼ぶイルミの声は、切なさを含んでいて。
怒ってるのではなく、すごく心配してくれていたんだと思ったサクラは申し訳なさそうにイルミの背に腕を回した。するとイルミの腕に力がこもる。何かを求めるように。
『イルミ…ごめんね。』
「サクラ…っ」
(そんな声で呼ばないで…)
イルミの求めるような切ない声に喉が詰まる。
胸が苦しい。
こんなに気持ちを表に出すイルミは見たことがなかった。
心配してくれているのはすごく伝わる。
でも…本当にそれだけ?
私の自惚れなのかな。
「あんまり心配させないで」
しばらくしてそう言ったイルミの声は、いつもの抑揚のない声。そして何もなかったかのようにサクラを解放した。
『う、うん!ほんとごめんね!』
あまりに普通にしている彼にサクラも合わせるしかなかった。
(…オレ、何やってるんだろ。なんとかしないと色々支障が出る…)
「行くよ」
そう言ってイルミはまたサクラを抱えて走り出した。