第6章 過去
―――また嫌な夢を見た。
こっちの世界に来てから何度見ただろう。
思い出したいことは思い出せないのに。
思い出したくないことばかり強制的に見せられる。
なんなんだ。いい加減にしてほしい。
『こんなにツバキは優秀なのに、お前は…』
『あんたがいなければ私たちは幸せになれたのに』
『お前のせいで人生が狂った!』
私だって
望まれないなら
生まれたくなんてなかった
―――…
『お姉ちゃん』
ツバキ…?
『あたしお姉ちゃん大好き!』
ああ、ツバキだけは私のことわかってくれる。
本当に?
本当にそうだった?
「……!……!!」
誰か呼んでる…誰だろう
「…サクラ!」
はっきり自分の名前を呼ばれてサクラは目を覚ました。目の前にはイルミの顔。
『あ、れ?イルミ…』
「大丈夫?結構うなされてたけど」
『あーうん。平気。夢見てた。』
そう言って体を起こすとイルミの親指がサクラの頬を拭う。
『あれ、私泣いてた?』
「うん。初めて会った日もそうだったね。」
『…そうだね。あの時と同じ夢だったから。』
そう言って口元だけに笑みを作る。
うまく笑えてないサクラを見て、イルミがそっと抱き寄せる。
「…話してよ」
『え?』
「オレの知らないところでサクラが泣いてるのはいやだ」
『イルミ…ありがと』
イルミのぬくもりを感じてサクラは体を預けるとイルミは更にぎゅっと抱き締めてくれた。