第5章 スキンシップ × 兄弟
イルミの仕事の手伝いをした日から、サクラはイルミの顔をまともに見られなくなった。
それもそのはず。"消毒"とイルミは言っていたが事故とかはずみとかじゃない、ちゃんとしたキス。
ファーストキスだったわけではないが恋人でもない人からされるのは初めてだった。
(こんなの意識して当然でしょうよ!!)
それなのにイルミときたら…
「サクラ、起きてるの?」
そう言いながら勝手にサクラの部屋に入ってくるイルミ。
『ちょっと!勝手に入ってこないでよ!』
「なんで?」
『なんでって…私も一応女なんだからせめてノックくらい…』
ちゅ
『なっ!?』
「あ、真っ赤になった」
『イルミーーーっ!なんであなたはそうやってすぐちゅーを…』
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
またそれ言う!
今のは頬にキスされただけだが、あの日からイルミは会う度にあちこちにしてくるようになった。
そしてその度にこのやりとりをしているのだ。
(なぜだ!イルミはキス魔なの!?)
「あれ、足りなかった?」
『んなわけないでしょ!?』
「そ、残念」
イルミは無表情でも楽しんでいるオーラに包まれている。両手で顔を仰ぎながら顔の熱を取ろうと必死なサクラ。
そのやりとりをドアの隙間から覗く影…
「…覗くなんて悪趣味だね」
『はい?』
楽しいオーラはいつの間にか消えて、イルミがサクラの方を見ながらそう言うと、キィ、とドアが少し動いた。
『え、何?イルミ、どうしたの?』
「…出てこないと後で知らないよ」
黒いオーラを纏わせたその言葉に、サクラの部屋のドアが勢いよく開いた。
「いや、兄貴!これは、えっと…」
「キル、カルト、ミルキ。なんのつもり?」
「い、いやほらキルがさ、イル兄に彼女がいていちゃいちゃしてるとか言うから…」
「てめっざけんな!言ってねーだろ!」
「…イル兄様、ごめんなさい」
わちゃわちゃとサクラの部屋に入ってきた3人。
太った男の人と、銀髪猫目の男の子と、着物がよく似合う女の子。