第17章 新生活 × 念
────その頃…
「やぁ◆キミからのお誘いだなんて珍しい◆」
「…サクラに会った」
「へぇ★それでどうしたの?」
「逃げられた」
ヒソカは目を見開いた。イルミからまさかあの子が逃げられるとは思ってもみなかった。
そしてすぐに何か能力を使ったと気付く。
「ヒソカ、あいつはいつ念を覚えたの?」
イルミもわかっていたようだ。
「さぁ◆ボクは何も教えていないよ◆いなくなってる間に何かあったんじゃないかな◆」
「…お前、何か知ってるんじゃないの?」
「うーん…知ってることはあるけどボクから言うことじゃないなぁ★」
「言いなよ」
「どうしようカナ◆」
「言わないと殺すよ?」
「それはそれで大歓迎だな◆っていうかイルミ、サクラはもういらないんじゃなかった?」
「……」
「くっくっく★キミも素直じゃないね★」
「うるさい」
「仕方ないな、特別に教えてあげるよ◆サクラ、キミが好きだって言ってたよ★キミのことだけだって★」
「…ふーん」
「確かにサクラはクロロのところにいたけど、キミに会いたがっていたのは間違いないよ◆クロロに引き止められたのを断れなかっただけだ◆あの子の性格を考えればわかるだろ?」
「……」
「あの子もキミもモタモタしてると後悔するよ★」
最後の言葉には何も返さず、イルミはその場を去って行った。
「ボクもたいがい素直じゃないな…◆」
くつくつと自嘲気味に笑うヒソカの目は、どこか切なさを孕んでいた。
(もう殺せるなんて言って、全然殺せなかった。隙なんていくらでもあったのになぁ。やっぱりあいつには甘いな…)
でも、前とは違う。今はその理由を自覚している。
「あ、ヒソカに居場所聞くの忘れた。まぁいいか、だいたいの方向はわかるし適当に探そう」
”後悔するよ”と言ったヒソカの表情はいつもと違った。きっとヒソカもサクラを傍に置いておきたいのだろう。
(でも誰にも渡さない。あれはオレのものだ)
「さてと…」
イルミは暗闇の中へと消えていった。
後悔しないために彼女の元へ。
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