第17章 新生活 × 念
『おおー…これが試しの門かぁ…』
クロロと別れてから、迷うことなくククルーマウンテンに到着したサクラ。バスを降りてすぐ目に飛び込んできた、大きすぎるそれを見上げていた。
『これって、勝手に開けて入っていいのかな?というか私開けられるの?念は使えるといってもねぇ…うーん…』
ぶつぶつ独り言をいっていると、
「おやおやお嬢さん、何か御用かね?」
『えっ?あ…(出た!ゼブロさん!)』
「ああ、すみませんねぇ突然お声がけしてしまって」
『いえいえ!あ、私、サクラと申します!』
「ゼブロです、どうも。で、何か御用ですかな?」
守衛室に促されながら、事の経緯を簡単に説明した。そしてサクラは出されたお茶でひと息つく。
「ははぁ…イルミ坊っちゃまのご友人ですか。うーん…」
『? あの、何か…?』
「いえね、イルミ坊っちゃまはしばらくお帰りにならないと本日言付けがあったんです。」
『え!そうなんですか!?』
湯呑みを落としそうになり、あたふたと両手で支える。
「ええ…せっかく来て頂いたのに申し訳ないです。」
頭を下げるゼブロにサクラは慌てる。
『いっいえいえそんなっ!頭をあげてくださいゼブロさん!私が勝手に来ただけなんですから!』
黙ったまま頭を下げていたゼブロは、ひと呼吸置いてようやく顔を上げた。
「…もしよろしければ、イルミ坊っちゃまが帰ってきたらご連絡差し上げましょうか?」
『いいんですか?嬉しい!』
「では、連絡先を…」
『……え?』
「え?」
ここでサクラは重大なことに気がついた。
携帯電話がない!
住所もない!
連絡もらえない!
というか!お金がない!!
結局どうにもならず、守衛室の連絡先を教えてもらって携帯電話を購入後に連絡するということで落ち着いた。
『…ネーロ、なんとかしてお金作る方法ない?』
「あるわけないでしょ。」
『だよねー!あははっ』
当然の答えが返ってきて、から笑いが虚しく響いた。
バスに乗って街まで戻り、サクラがあからさまに肩を落としてとぼとぼ歩いていると横から声をかけられた。
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