第3章 質疑応答 × 接近
(面白い…)
「あ、そうだ。メイドの話しだけど、あれ嘘だから」
『へ?』
思わずぽかんと気の抜けた顔をするサクラ。
自分で専属メイドにするとか言っておいて、何が嘘なのか。
「なに変な顔して。専属メイドなんていらないし、母さんがうるさいからそう言っただけ」
『変な顔って失礼だよ…!そっかぁ!早く言ってよイルミってば!』
「でも、母さんの前ではそれらしくしてないとね」
『ソウデスネー…』
あのヒステリックなお母様の様子を思い出して身震いするサクラ。
「だから、しばらくはオレと一緒にいて?」
『一緒って…暗殺のお仕事のときも!?』
「そ。サクラ一人にしたらどうなるか目に見えてるし。わかった?」
正論すぎて頷くしかないサクラは肩を落としながら部屋に入っていった。
閉じられた扉を見つめながら、イルミは
(専属メイドでもいいんだけどね)
そんな考えが浮かんで、また変な感覚に襲われた。
「…オレおかしくなったかな」
首を傾げて少し考える。
「いや、気のせいだ。あんな人間にオレの感情が動くわけない」
”変な感覚”の正体に気付けば後戻りできなくなる気がして、自分に言い聞かせるように呟くと再度考えるのをやめ部屋に戻るのだった。
その頃、サクラは…
心身ともに疲れ切っていて、部屋に入るなりふかふかのベットに倒れ込んで身体を沈めた。
(さっきから感じる違和感とか頭痛とかなんなんだろう…)
絶対に見たことないはずなのに、100%と言い切れない感覚がずっとある。
『…っあー!もうやめ!お風呂入って寝よ。』
部屋にはバスルームが完備されていたり、家具や調度品も触れるのも躊躇うくらい豪華なものばかりと、贅沢な部屋だった。
(とりあえず住む場所もあるし、細かいことは気にせずラッキーだと思っておこう!)
そして、お風呂もそこそこにサクラはベッドに入るとすぐに眠りに就いたのだった。