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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第18章 修羅の轍【沖田総司編】


お千ちゃんの真剣な眼差しが、私と千鶴へと注いできた。
その目を見ていると、段々と胸騒ぎがしてきてどうも落ち着かない。

この話の先を、千鶴に聞かせてはいけない。
これからお千ちゃんが何を言うか、何を千鶴に聞かせるのか察しはついた。
だけど、もうこれ以上は隠し通せない……。

「それも、承知している。確か彼らは、自らを『鬼』と名乗っていたな。信じているわけではないが……」
「いえ、鬼と言われた方が妥当でしょう。三人が三人共、人間離れした使い手ということですし。それなのに、人の世界では全く名が通っていないーー。そんなことは、本来有り得ないことです」
「あはは、山南さんがそういうことを言うのって、珍しいですよね」

山南さんの言葉に、沖田さんは面白そうに笑っていた。
彼は風間千景達が鬼だなんて信じていないのだろう。
そう思っていると、千鶴は戸惑った様子でお千ちゃんへと声をかけた。

「お千ちゃん。それで、あの……」
「彼らが人ではないことは、あなた達もよくおわかりの様子ですね。ならば、話は早いです。実を申せば、この私も人ではありません。彼らと同じ……鬼なのです」
「お千ちゃんが……!?」
「……やっぱり」

私は小さく呟いた。
初めて会った時から、お千ちゃんの纏う雰囲気は風間千景たちと同じだった。
だからなんとなく、察していたけれどもやっぱりそうだったのだ。

「本来の名は、千姫と申します」

本来の名を名乗ったお千ちゃんは、優雅に一例をした。
彼女のその動作は、堂に入っていてやんごとなき身分を表しているよう。
そして、彼女の隣にいた女性も自己紹介をした。

「私は、千姫様に代々仕えております、忍びの家の者御座います」
「……なるほど。初対面だっつうのに、やけに愛想がいいと思ってたが……。おまえの狙いは最初から、俺を通じて新選組の情報を仕入れることか」
「さあ、何のことに御座りましょう?」

土方さんに睨まれても、女性は全く動じない。
それどころか、涼しげに微笑みながら小首を傾げている。

「何だよ土方さん、知り合いなのか?」
「よく見ろ、新八。君菊さんだ。島原で会った時と風体は違うが、顔は同じだろ?」
「な…何だって!?」

永倉さんはとても驚いた表情をして、君菊さんを見て目を見開かせている。
そんな彼らを見ながら、君菊さんは妖艶な笑みを浮かべていた。
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