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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第17章 亀裂の響き【沖田総司編】


その姿はまさしく化け物そのもの。
人間のようには見えず、私は息を飲みながら羅刹の様子を見た。
そして、今ならば隙をついて逃げることが出来るかもしれないと考えた。

「千鶴、立って!」
「あっ……!」

千鶴を立たせて、逃げようとした時だ。
畳に這いつくばっていた羅刹は、ゆっくりと身体を起こしてから血を流している千鶴へと、その真っ赤な瞳を向けていた。

「足りない……これだけでは……足りないいいいいぃ!!」
「っ!!」

口を赤黒く染め上げた羅刹は、千鶴の血が流れ続けている腕へと目を向けて凝視していた。
そしてにたりと、寒気がするほどのおぞましい笑みを浮かべると、刀を構える。

「ひひひひひ……それだっ!お前の血をもっと寄越せえぇぇええ!!」

羅刹は正気じゃない笑い声をあげると、畳を乱暴に蹴りつけてこちらへと迫ってきた。
このままでは、千鶴が危険だと判断した私は、刀から鞘を抜くと男へと目掛けて振り下ろす。

「ぎゃあああっ!!」
「っ……!」

斬った瞬間、男は叫び声をあげながら血を溢れだし、飛び散った血は私の顔や襦袢に付着した。
その瞬間、急に目眩が更に加速して吐き気がしてきて倒れそうになる。

(人を、人を……斬った……斬った)

呼吸はだんだんと荒くなり、視界が歪みはじめていく。
そして羅刹は斬られた事なんて気にせずに、にたりと笑いながらこちらに迫ってきた時だ。

「伏せろ!いいって言うまで、絶対に頭を上げるんじゃねえ!」
「っ……あ」

聞き馴染んだ声が聞こえたけれども、視界が歪んでいる私にはその姿がはっきりと見えない。
だけども、言葉通りに私は千鶴の体を伏せさせて、自身も伏せた。

「なっ……!」

視界がはっきした時、そこには刀を構えている土方さんの姿があった。
彼の声を聞き、姿を見ただけで何故か安心してしまう。

そして、突然現れた土方さんに羅刹は戸惑いながら刀を構えた。
だけどその動きは遅く、土方さんが袈裟懸けに斬りつける方が早かった。

「ぎゃああああぁッ!!」

斬られた羅刹は、また絶叫してその声が部屋にこだまする。

「ぐっ、う、ううあ……」

斬られた所を抑えながら、羅刹は苦悶の声をあげていたけれども、直ぐに斬られた傷口は塞がっていく。

「今のうちだ。雪村達、こっちへ来い!」
「は、はい!千尋、動ける!?」
「う、うん……」
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