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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


千鶴が返事をして頷けば、斎藤さん達は近くにある呉服屋へと入っていった。
聞けば、あそこの呉服屋は浪人風の男たちが出入りしてたらしく、斎藤さんは詮議をしに向かったのだ。

「新選組だ。先日、浪人風の男が出入りしたという噂を耳にした。詮議させてもらう」
「へ、へえっ」

斎藤さんたちが出てくるまで暫くかかるだろう。
そう思いながら、斎藤さんが出てくるまで近くで父様の聞き込みでもしようかな……と考えていた時である。

「てめえら、道を開けやがれ!勤王の志士様がお通りだ!」
「……勤王?」

通りの向こうでは、柄の悪い浪士が周りの町人に威嚇しながら歩いていた。
先程、浪士は【勤王】と言っていたがそれは【尊王】と同じ意味である。

尊王派の長州藩が征伐されたりとしている中で、大声であんな風に言えるなんて驚いてしまう。
それに、勤王は名ばかりであり強盗や殺人を手に染める者も多いと聞く。

(よく、勤王なんて大声で言える……)

眉間に皺を寄せながら、浪士を見ていれば路地で遊んでいた子供を蹴飛ばそうとしていた。

「おら、邪魔だっていってんだろ!」
「……私、止めに入ってくる」
「え!?ちょ、千鶴!」

静止しようと思っていれば、私よりも千鶴が動く方が早かった。
そして、千鶴が止めに入ろうとした時だ……。

「やめなさいよ、みっともない!」
「あぁん!?何だ、てめぇは!たかが女が、俺たち勤王の志士に意見するってぇのか!?」
「その【たかが女】に意見されることをみっともないと思いなさいよ。京の人がどれだけ迷惑してるのか、わからないの?」
「おのれ……!」

浪士の目の前に立ちはだかっていたのは、身なりが綺麗な女の子だった。
そして、浪士は女の子の言葉に目を剥くと掴みかかろうとしている。

「待ってください!」

すると、千鶴は女の子と浪士の間に入り込んで女の子を庇うように立ちはだかった。

「なんだおまえは。その女の知り合いか?」
「……いえ、知り合いではありません」
「知り合いじゃねぇんなら、すっこんでろ!」
「すっこむ訳にはいかないから、立ちはだかっているのが分からないんですか?」
「あ……千尋」

私は千鶴と女の子を庇うように、浪士の前に立つ。
すると浪士は更に目を見開かせながら、顔に怒りをあらわにしている。
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