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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


顔色は多少ではあるが青ざめている。
本当にけだるそうな表情もしているけれど、起きるのに支障はきたさないみたい。

だけど、昼間に動くことが困難というのはこれからの生活では困るのでは……。
そう思っていれば、山南さんは静かに囁くように言葉を呟いた。

「私はもう、人ではありません」

その言葉は酷く途方もない重さを持っていた。
彼の【人ではない】という言葉に、幹部の方々も千鶴も何とも言えない表情を浮かべる。
だが、近藤さんは嬉しそうに声を震わせて彼に声をかけた。

「……いや、山南君。君が生きていてくれて良かった。我々は、それだけで充分だとも……!」

近藤さんは山南さんの肩を掴むと、嬉しそうに目尻に涙を浮かべていた。
本当に、山南さんが生きている事に喜んでいれば、沖田さんが山南さんに質問を投げかける。

「……それで、腕の方はどうなんです?治ったんですか?」
「まだ、本調子ではありませんからね、自分でもよくわからないのですが……」

山南さんはゆっくりと、動かなかったはずの左腕を持ち上げると、手のひらを閉じたり開いたりと動かしていた。
その様子を見れば、どうやら動かなかった左腕は治っているみたい。

「……治っているようですね。少なくとも、不便がない程度には」

喜んでいいのか、どうなのか分からなかった。
山南さんは左腕の事を気にしていたから、治ったことを喜んだ方がいいのかもしれない。
でも、左腕を治す為に彼は……。

「……あの薬を飲んだってことは、昼間、動けねえようになっちまったんだろ?それなのに、隊務に参加なんてできるのか?」

原田さんの言葉に、山南さんは事も無げに言った。

「解決策は、あります。私が死んだことにすればいい」
「なっ……!」
「そんな……死んだことにって」

あまりにも驚く言葉に、原田さんは思わず声をあげて、私もつい言葉を発してしまった。
だけど、山南さんはただ穏やかに微笑みを浮かべているだけ。

「これから私は【薬】の成功例として、羅刹を束ねていこうと思っています」
「山南さん、それ、本気出言ってるのか!?あんた、自分が何を言ってるのか、わかってるのかよ!?」

彼の【死んだことにすればいい】という言葉に、永倉さんは声を荒げた。
まるで、この場にいる幹部の方々の言葉を代表するかのように。
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