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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


「え?薬を探す?」

夜も更けて、私は千鶴の部屋で寝るまでの時間を過ごしてた。
その際に、千鶴からある提案を持ちかけられたのである。
とある薬を探してみないかと……。

「うん。沖田さん達が言ってた薬があるでしょう?」
「あ……うん」

屯所に来てまだそんな日にちが経っていない頃。
山南さんが、大阪で怪我をされたという報告を聞いた時に沖田さんや永倉さん達が話していた【薬】の事を思い出した。

『薬でもなんでも使ってもらうしかないですね。山南さんも、納得してくれるんじゃないかなあ』
『総司……滅多なこと言うもんじゃねぇ。幹部が羅刹になってどうするんだよ?』

あの話は永倉さんから【忘れてほしい】と言われて、なるべく忘れようとしていた。
彼らが言っている薬は、新選組にとっては秘密であり、そしていわく付きみたいなのは、なんとなく察している。

「だけど、私たちは関わらない方がいいんじゃない?永倉さんにも、忘れろって言われてるじゃない……。でも、なんで急に薬なんかを調べようとしたの?」
「その薬があれば、山南さんの腕が治るのかなって。ほら、私たちは蘭方医の娘たちだから……新選組の皆さんよりは詳しいから、調べて処方したらと思って……」
「……でも、勝手なことをしたら、あらぬ誤解をされるかもしれない。だから、辞めておこう?」
「……うん」

千鶴は俯きながらも、薬を探すことは諦めてくれた。
私もあの薬が気になったし、もしかしたら山南さんの腕はその【薬】で治るかもしれないと考えたけれど、余計な事はしない方が得策だ。

そして深夜のこと。
カタン……という物音で目を覚ました。
隣の部屋から足音が聞こえてきて、私は眉間に皺を寄せると襖を開けた。

「千鶴。どこに行くの」

そこには着物に着替えている千鶴の姿。
彼女は【しまった】という表情を浮かべて、焦ったようにしていた。

「薬を探しに行くの?」
「う、うん……」
「……はあ。私も行く」
「え、でも!」
「千鶴を一人で探させる訳にはいかないよ。私も行くからちょっと待ってて」

私は寝巻きから着物に着替えると刀を腰に差し、千鶴と共に廊下を歩いた。

もう皆さん、眠りについているのか人はいない。
その事に安堵しながら歩き、玄関まできた。

「良かった……」

人がいないことに安堵していた時だった。
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