第14章 動乱の音【沖田総司編】

「そう……そうだったのか。こいつが迷惑掛けたっていうか、余計なもん見せちまったようだな。つうか……お前ら知り合い同士なのか？」
「たまたま、通りがかっただけです。それに……私事中でしたから、何処にも報告していません。あ、そうなんですよ！実は千尋ちゃんと千鶴ちゃんは幼馴染なんですよ！」
「そいつは……すまねえな。て、お前ら幼馴染なのか！まさか、八郎と雪村達が幼馴染だったとはなあ……まあ、立ち話も何だ。中に入ってくれ」

土方さんは複雑そうな表情でそう言うと、八郎お兄さんを案内して中に入っていった。
そして私は、広間に向かった二人にお茶を出す為に勝手場に行き、お茶をいれてから二人に出すと、私もその場に居るように言われたので二人の話を聞くことに。

「京に来たのは幕命って言ってたな。何の仕事で来たんだ？」
「今は、奥詰役を務めています」
「奥詰……。八郎お兄さん、そんな大役を務めていたんですね」
「大役だなんて、そんな」

八郎お兄さんの家は幕府直参の旗本というのは知っていた。
でも奥詰という、将軍様の身近を守るお役目をされていたとは知らずにそういえば、八郎お兄さんは少し照れている。

「あ、でも……土方さんと八郎お兄さんってお知り合いだったんですね」
「ああ。こいつはな……お前も知ってるだろうけど、江戸じゃ四本指に入る道場の心形刀流伊庭道場の跡取り息子だろ？で、その伊庭道場と俺たちがいた道場とは、そこそこ交流があってな……その縁だ」
「そうだったんですね……！」
「ええ、そうなんです。だから、トシさんたちがいる京に来ることになって、とても楽しみにしていたんです」

嬉しそうにする八郎お兄さん、土方さんは少し厳しい表情をした。

「勝手に喜んでろ。……だが、覚えとけよ。京はそんなに楽しいところじゃねえからな」
「はい、肝に銘じておきます。でも……そんな危険なのに、女の子達でも隊士が務まるんですか？」
「あ、それは……その……」

八郎お兄さんの言葉に、土方さんは気むずかしい顔になっていた。
そんな土方さんを見て、八郎お兄さんも何かを悟ったようだ。

「おい、雪村。姉を呼んでこい」
「あ、はい！」

土方さんに言われて、私は直に千鶴のいる部屋へと向かった。
千鶴は覚えているだろうか、八郎お兄さんの事を………なんて思いながら千鶴を連れて広間に戻った。