第14章 動乱の音【沖田総司編】
沖田さんは胸部に一撃を受け、血を吐いて気を失ったらしい。
平助君は額を切られて血が止まらず、そのまま昏倒したらしいが二人は千鶴の応急処置を受けたことにより一命は取り留めた。
永倉さんも、左手の親指の付け根を負傷していたがそれは私がとりあえずの応急処置をした。
「千尋ちゃん、ありがとうな。血が苦手なのに手当してくれて」
「いえ……応急処置ぐらいですけど。屯所に戻ったらきちんと手当しましょうね」
「おう!」
三人は命に別状はなかったが、裏庭で戦っていた新選組の隊士の方が戦死された。
他にも二人の隊士の方々が、命に関わるような大きな怪我を負った。
(千鶴と二人で応急処置はしたけど……おそらく、あの傷では彼らは助からない可能性が大きい……)
京都守護職や京都所司代も、それぞれに逃げようとする浪士と戦っていたと聞く。
この【池田屋事件】の活躍により、新選組は広く名を馳せたのだった。
京の平和は、これで守られたかに見えた。
けど、まさかこの事件をきっかけにして、更に大きな事件が動き始めていたことを、今の私や千鶴は知るよしもなかったのだったーー。
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ー元治元年・六月末ー
池田屋事件が終わって数週間が過ぎた頃。
その間、新選組は池田屋から逃げた不逞浪士を捕まえるために、京の巡察を厳しくしていた。
過激派浪士が新選組に仕返しに来るという噂が広まっていたり、巡察中に起こった他藩との問題があったりして、新選組ではとてもぴりぴりした日々が続いている。
それがなんとか落ち着いてきた頃だった。
「最近、私や千鶴への監視が緩くなったような…」
池田屋の件の影響なのか、私や千鶴への監視が緩くなり、屯所前の掃き掃除を一人で任されるようになった。
箒を片手に、屯所前の落ち葉を集めたりと掃除をしていれば足音が聞こえてきた。
「すみません、こちらが新選組の屯所ですか?」
「あ、はいーー」
背後から声をかけられ、慌てて振り向いた瞬間目を見開いた。
そこにはあの日、茶屋で武田さんの横暴を止めようとした時に助けてくれたお武家さんがいたのだ。
「貴方は、あの茶屋での!!」
「こんちには。お茶屋さん以来ですね」
「お久しぶりです……!あの時は本当にありがとうございました!」