第14章 動乱の音【沖田総司編】
ー元治元年・六月ー
先日の一件で父様を見つける事は叶わなかった。
でも、それ以降私たちは巡察への同行が許可されたのでようやく本格的に父探しが出来るようになった矢先の事である。
その日、私たちは土方さんに呼び出されたのであった。
「……失礼します」
「失礼します」
土方さんの呼び出しに緊張しながらも、広間に入ればそこには土方さんの他に沖田さんと平助君も同席していた。
その事に少し安堵してしまう。
何を言われるのだろうか。
そのことに緊張しながら、土方さんを見れば不機嫌そうであり、どうしたのだろうと思っていればやっと土方さんが口を開いた。
「おまえ達の綱道さん捜しの件だがな、しばらく様子を見ようと思う」
「え!?」
「どうしてですか……!?」
やっと本格的に父様を探せると思っていた矢先なのに。
そう思っていれば、土方さんは未だに不機嫌そうな表情のままで話を続けた。
「……長州の連中が不穏な動きを見せている。本来ならおまえ達を外に出せる時期じゃない」
「そんな……」
長州藩は尊皇攘夷派の代表と言っても過言では無い人たちだ。
そんな彼らの思想に幕府達はあまり良く思っていないのもあるが、新選組は幕府の為に働いている。
だから、新選組と長州勢力は敵対しているのだろう。
敵対している長州藩が活発に動いていれば、確かに私たちを連れ歩くのは大変なんだろう。
でもそれはーー。
「長州藩の動きが落ち着くまでは、同行は控えろということですか?」
そういうことなのだろう。
そして土方さんは千鶴の言葉を肯定するように頷けば、沖田さんと平助君へと視線を向けた。
「というわけで、今日からこいつらを巡察に連れて行くのはとりやめだ」
「なるほどねー……。だから当番のオレらが呼ばれたってわけか」
平助君は納得したように頷いていた。
でも程なくして、少し困ったように眉を寄せる。
「でも今までだって、こいつらが巡察に迷惑を掛けたことはないし、別にいいんじゃないかなあ」
「そうそう。僕たちに何かあっても関わらないようにしてくれればそれでいいし。……どさくさに紛れて逃げ出すこともないし、ね?」
「……私たち、逃げません」
沖田さんはからかっただけなのだろう。
でも、千鶴は黙っていられなくなったのか口を開いてそう言って私も小さく頷いた。