第3章 巡察【共通物語】
ー文久四年・二月ー
私と千鶴が新選組屯所に来てから、約一ヶ月が過ぎた頃。
大阪へと出張に行っていた土方さんと山南さんが、屯所に帰ってきた。
山南さんの怪我のこともあり、暫くの間はバタバタと慌ただしい日々が続いた。
そして、山南さんの怪我は酷かったらしい。
怪我のせいか山南さんは、自身の部屋から出ることが極端に減り、時折姿を見せたと思えば、皆に刺々しいしい態度を取ることが増えた。
部屋に篭っているのは山南さんだけではない。
私と千鶴も、部屋に籠る日々は相変わらず続いていた。
「父様捜し、出来ないのかな……」
土方さんが帰ってきて数日。
そろそろ父様捜しをしたいが、土方さんは忙しそうにされていて【父様を捜したいです】とはなかなか言えずにいた。
「でも、やっぱり父様を早く捜したいよね。土方さんが忙しいのはわかっているけど、訪ねてみよう、千尋」
「……そう、だね。行ってみようか」
とりあえず、私たちは広間に来てみたものの土方さんの姿はない。
それならば部屋にいらっしゃるのだろうかと思っている時であった。
広間にふらりと見知らぬ隊士さんが入ってきた。
一ヶ月、この八木邸という所で住まわせてもらっているが一度も会ったことのない隊士さんだ。
「あの……すみません、土方さんを見ませんでしたか?」
千鶴は緊張した様子でその隊士さんに声をかけた。
だが、その隊士さんは私たちをまるで胡散臭い人間を見るような目で見てきた。
「……おまえ達はどこの誰だ?なぜここに居る?」
「え……あの、私たちは……」
「誰だと聞いている。答えろ!」
「わ、私たちは……雪村千鶴と雪村千尋といいます」
「ほう……副長が小姓に取り立てたという見習い隊士とは、おまえ達のことか」
「は……はい」
「そう、ですが……」
知らなかったけれど、私たちはどうやら屯所内では土方さんの見習い隊士の小姓となっているらしい。
すると、目の前にいる隊士さんは私たちを冷ややかな眼差しで見ていた。
「ふうむ……。おまえ達、局長や副長とはどんな関係だ?同じ江戸の出身らしいが、どんな縁故を使って取り入った?」
「……そんなことはしていません!」
「私たちは別に取り入ってなどいません」
「そうムキになるところを見ると、ますます怪しいぞ」