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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「……そこまで言うのであれば、仕方ありませんね。ただし、俺は君の護衛役を申し付けられています。ここを出ると言うのであれば、俺も共に行きますが……構いませんね?」
「……はい、構いません。千鶴は相馬君とここにいて」
「でも……!」

私は千鶴を安心させる為に微笑んだ。
風間千景が恐らく最も欲しがっているのは、純血の鬼である千鶴。
彼を説得するのは私が適任だし、千鶴をなんとか守らなければいけない。

「大丈夫。すぐに、戻ってくるから」
「……千尋」

心配そうにする千鶴に笑みを浮かべた私は、すぐに相馬君へと視線を向ける。
彼もとても心配そうにしていて、そんな彼に私は話しかけた。

「相馬君、千鶴をお願いね。もしなにか千鶴にあれば……許さないから」
「……分かりました。必ず、雪村先輩の事は守ります」
「その言葉、信じるからね」

そして私は、島田さんに先導されながら境内へと出た。
辺りには隊士の方や風間千景の姿はなく、戦っているのはもう少し先の所のようだ。

早く向かって、風間千景を説得しなければ。
じゃないと怪我人も増えるし、何より千鶴が危険に晒されてしまう。

「雪村君、こっちです」

島田さんがそう言った瞬間だった。
目の前で何かがよぎったと思った時、島田さんが何かに気がついて声をあげる。

「ーーむ!?」

その瞬間、島田さんの大柄な身体が軽々と宙を舞った。

「ぐっ……!」
「島田さん!」

島田さんはそのまま土塀に叩きつけられて、打ちどころが悪かったのか地面に突っ伏したまま動かなくなってしまった。
あっという間の出来事に驚きながらも、慌てて島田さんの元に駆け寄ろうとした時ーー。

「どこへ行くつもりだ?」

耳元で、聞き覚えのある声がした。
この声が風間千景の声だと分かった瞬間、彼の腕が伸びてきて身体を引き寄せられる。

「っ!!は、離して!」
「やっと見つけたぞ。雪村千鶴を最初に連れてこようとしたが、かなり邪魔してくる小汚い犬に邪魔されて、まがい物たち集まってきてな……。仕方ないから、今宵はお前だけでも連れていくことにした」

既に千鶴の元に向かったと知り驚愕した。
だけど、風間千景が言った【小汚い犬に邪魔された】というのは恐らく相馬君のことだと思う。
彼は千鶴のことをちゃんと守ってくれたんだと思うと、思わず安堵してしまう。
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